ヴァリラ×プラティ夜会話




プラティ 「あ・・・」

ヴァリラ 「プラティ、おまえか・・・何しに来た?」

プラティ 「別にいいじゃん。あれ? そういえば、はじめて会ったときもここにいなかった?」

ヴァリラ 「ここにいる時はただのひとりの人間でいられるからな。
ここではオレをヴァリラ様なんて呼ぶヤツはひとりもいない。親が金の匠合の長というだけでヴァリラ様、ヴァリラ様と息苦しい毎日だ・・・。まあおまえにはわからんか」

プラティ 「ちょっとわかるかも」

ヴァリラ 「そうなのか?」

プラティ 「わたしのお父さん、黒鉄の鍛聖だったシンテツって人なんだ・・・知ってる?」

ヴァリラ 「あたりまえだ、ワイスタァンの鍛冶師でシンテツの名前を知らない者などいない。
だがなるほど・・・シンテツの娘か。天才のオレが破れるわけだ」

プラティ (自分でも天才って、すごい自信だなぁ・・・)

ヴァリラ 「それから新米鍛冶師の武器を安く買い上げる件だが・・・やめるよう父に言っておいた」

プラティ 「ほんとに!?」

ヴァリラ 「言っただけだ。オレの父がすぐにやめるとも思えんが」

プラティ 「それでもいいって! ありがとヴァリラ!」

ヴァリラ 「うるさい・・・別におまえのためにやったわけじゃない! ・・・オレは帰るぞ!」






ヴァリラ 「なんだおまえか」

プラティ 「ひっどい!なんだはないじゃん!な、ん、だ、は!」

ヴァリラ 「どうした? 友人を倒さなければならなかった自分をなぐさめてほしいのか?」

プラティ 「うっ、変なとこばっかりするどいし」

ヴァリラ 「オレは金の匠合の長の息子だ。欲しい情報はすぐにでも手に入るさ。たとえば
そのラジィってヤツが実は女でおまえにベタ惚れらしい・・・とかな」

プラティ 「ウソ!?」

ヴァリラ
「冗談だ」

プラティ 「・・・何それ?」

ヴァリラ 「ふむ、オレのジョークでも少しは元気の足しになればと思ったが、今ひとつだったようだな・・・忘れてくれ」

プラティ 「そうなんだ・・・わかんなかった」

ヴァリラ 「ふむ。オレには友人がいないからラジィとやらを倒したおまえの痛みはわからんが・・・鍛聖になるからには越えなければいけない痛みなのだろうな。そういう意味では、おまえの方が一歩先を行っているということか」

プラティ 「・・・・・・」

ヴァリラ 「気にするな。心配しなくてもおまえはオレが倒してやるさ」






ヴァリラ 「プラティか。今日の試合見せてもらった・・・ふぬけたか」

プラティ 「どういうこと?」

ヴァリラ 「文字通りだ。オレを倒したときの冴えがない。オレを倒したときの力がない。オレを倒したときの気迫がない」

プラティ 「そんなこと言われても・・・」

ヴァリラ 「相手が女だからか? だから手を抜いたのか?」

プラティ 「そんなんじゃないって! わたしは本気だよ!」

ヴァリラ 「そうか。だが試合の後、友達になろう、そう言ったそうだな。女同士で群れるのはかまわんが・・・おまえには似合わない」

プラティ 「なんで? 別にいいじゃん仲良くすれば?」

ヴァリラ 「群れるヤツはいずれ牙を抜かれる。オレの父親・・・金の匠合の長だが、あいつのようになってしまう。牙を抜かれた人間はいずれ大切なものさえまもれなくなってしまうのだ・・・。あいつがオレの母をまもらなかったように。あれは・・・男ではない」

プラティ (そっか、ヴァリラってお母さんいないのか・・・ちょうどわたしの反対だ・・・)






ヴァリラ 「プラティか」

プラティ 「ジャマだったかな?」

ヴァリラ 「そうだな・・・だがまあいいだろう。ところできいたぞ。剛の鍛聖に会ったそうだな」

プラティ 「なんで知ってるの?」

ヴァリラ 「金の匠合の情報網を甘く見るな。このワイスタァンのことでわからぬことはない」

プラティ 「さすがだね・・・」

ヴァリラ 「まぁせっかくの情報網も、商売にしかいかせんのでは意味がないがな・・・」

プラティ 「それだけでもすごいと思うけど。そういえば・・・じゃあさ、今日あったことぜんぶ知ってるの?」

ヴァリラ 「ん? デグレアの兵士がリンドウをおそった話か? それならきいている」

プラティ 「ねえヴァリラ、こんなとき、わたしたちにできることってないかな?」

ヴァリラ 「あせるな、それは大人の仕事だ。俺たちは鍛聖になる、まずそこからだ。欲張っても何も出はしない」

プラティ 「・・・そうだね」

ヴァリラ 「それにそんなことよりも大事なことがあるだろう?」

プラティ 「・・・ヴァリラとわたしの勝負だね」

ヴァリラ 「わかっているじゃないか…ライバルはそうでなくてはな…」

プラティ 「ところでヴァリラ、今日の試合はどうだった?」

ヴァリラ 「ふん・・・当たり前のことをきくな」






ヴァリラ 「どうした? また悩みごとか?」

プラティ 「ううん、別に悩みごとってわけじゃないよ」

ヴァリラ 「そうか、それはいいことだ。悩んでいてはハンマーを握る手がにぶる。そんなおまえと戦って勝っても意味がないからな」

プラティ 「あ、そうだ。そういえばヴァリラ、なんで先に帰っちゃったの?」

ヴァリラ 「試合があった。それだけだ。それ以上の理由はない」

プラティ 「で、試合は?」

ヴァリラ 「聞くまでもないだろう? それともそれは挑発か? だとすれば望むところだ。
次の準決勝・・・その次の決勝、どちらで当たっても全力でおまえと戦える」

プラティ 「べぇつにぃー、そういうつもりじゃないよぉ。ま、全力で戦うっていうのはわたしとしても賛成なんだけどね」

ヴァリラ 「いいだろう」

プラティ 「・・・そういえばわたしたちいつのまにか準決勝まで来てるんだよねぇ」

ヴァリラ 「当然だろう? それともおまえは負けることを考えていたのか?」

プラティ 「そんなことないよ、すごいことだよなぁって思ってただけ。あとはサナレがふたつ勝てば準決勝だから、ヴァリラも応援してあげてね!」

ヴァリラ 「なぜだ?」

プラティ 「え?」

ヴァリラ 「なぜオレが敵の応援をする必要がある? 勘違いするな、オレはおまえたちと友達ごっこをしているつもりはない。・・・オレは帰る」

プラティ 「ヴァリラ・・・!な、何それ! あったまきちゃう! べ〜っだ!」






ヴァリラ 「聞いたぞプラティ、サイジェントの勇者に会ったそうじゃないか?」

プラティ 「ええ!? 何でもう知ってるの?」

ヴァリラ 「オレはこれでも金の匠合長の息子だ。その情報網を甘く見るなってことだ」

プラティ 「そっか。つまりナシュメントさんが教えてくれたんだね?」

ヴァリラ 「・・・そうとも言うな。で、どんなヤツだった? その勇者とやらは?」

プラティ 「フツーの人だったよ。ただ、いっしょけんめいですごくやさしい人だったかな」

ヴァリラ 「強いか?」

プラティ 「うん! すごく! 鍛聖の人たちよりも強いんじゃないかなぁ」

ヴァリラ 「それはすごいな」

プラティ 「こんど遊びにくるって言ってたから、ヴァリラも会ってみてよ」

ヴァリラ 「そうだな」

プラティ 「そしたらヴァリラの意地っ張りなところとかなおるかもしれないよ!」

ヴァリラ 「それはオレが意地っ張りで自信過剰で、そのうえ意地が悪いと言うことか?」

プラティ 「・・・いや別にそこまで言ってないんだけど」

ヴァリラ 「そうか・・・ならいい」






ヴァリラ 「プラティか、どうした?」

プラティ 「うん・・・いろいろ気になっちゃって・・・」

ヴァリラ 「おまえも分からないやつだな。小さなことを気にしたり変なところでおおざっぱだったり・・・今度はなんだ?」

プラティ 「勇者ってなんなのかなって・・・」

ヴァリラ 「そんなことか。決まっているだろう。誰かのために迷わず戦い勝ったもののことだ」

プラティ 「簡単に言うね」

ヴァリラ 「大切なのは迷わないことだ。本当に正しいことをするのに迷う必要はないだろう。
言葉を変えれば自分を信じる、ということだな」

プラティ 「なんでヴァリラはそういうところ自信満々かなぁ」

ヴァリラ 「心外だな・・・。・・・まあいい。それからな、本当の勇者は自分のことを勇者とは思っていないものだ」

プラティ 「え?」

ヴァリラ 「勇者なんていうものはなろうとしてなるものなどではないということだ。サイジェントの勇者もおまえの父親もそうだろう?」

プラティ 「そうだね・・・」

ヴァリラ 「ところでプラティ、オレは勇者になろうと思う」

プラティ 「はぁ? ヴァリラ・・・つい今、勇者はなろうとしてなれるものじゃないって」

ヴァリラ
「オレは別だ」

プラティ 「・・・さいですか」

ヴァリラ 「近いうちにオレは、金の匠合の・・・父の悪行をあばく。
見ていろ・・・オレは金の匠合をだれに恥じることもないものにしてみせる」






ヴァリラ 「プラティか・・・どうした、笑いに来たのか?」

プラティ 「あのねぇヴァリラ、どうしてそうなるの?」

ヴァリラ 「未熟な者の武器を安く買い上げて売りさばくだけでなく、デグレア相手に商売をしていたんだぞ?オレの父親は・・・」

プラティ 「笑わないってば、そんなことで。だってヴァリラはそれを恥ずかしいことと思ってるんだもんね?」

ヴァリラ 「そうだが・・・。フッ、まったく・・・おまえと話していると悩んでいた自分が馬鹿のように思える。そうだな、オレが恥じているのだからつまりオレが正しいのだ」

プラティ 「そうそう! あ、もしかしたらさ、なんかワケアリかもしれないじゃん!」

ヴァリラ 「理由・・・?」

プラティ 「うん、そう、理由。あ! そうだ! 確かめてみればいいんじゃない? その理由を!」

ヴァリラ 「確かめる? そうか・・・それもそうだな。よし、ならばさっそく明日にでも父のところに乗り込むとしよう」

プラティ 「がんばれ!」

ヴァリラ 「何を言っている? 当然、おまえもいっしょだ」

プラティ 「ええ〜!?」






ヴァリラ 「おい出かけるぞ、プラティ! 行き先はオレの家・・・いや、金の匠合だ。用意はできてるか?」

プラティ 「え?」

ヴァリラ 「何をしている? たしかめに行けといったのはお前だろう?
ルベーテと通じてデグレアに武器を売ったことを問いただす。おまえはオレにつきそい、すべてを見とどけなければならない」

プラティ 「ちょ、ちょっと待ってよ。それ、どういう意味?」

ヴァリラ 「・・・・・・オレはこうなることが嫌だったのだがな。仕方があるまい・・・。
つまりだな、おまえにオレのすること、生き様を見ていて欲しい」

プラティ 「それって・・・
プロポーズってやつですか?

ヴァリラ 「バカを言うな、ライバルとしてだ! それに・・・ちっ・・・どうとでも取るがいい!

プラティ 「わかったよ、ついて行ってあげるってば」

ヴァリラ 「ところでわかってると思うが護衛獣は抜きだからな!」

プラティ 「なんで?」

ヴァリラ 「・・・ツベコベ言うな!出かけるぞ!」

プラティ 「あっ、待ってってば!」

ヴァリラ 「・・・プラティ。これでオレの父親が・・・金の匠合のボスにふさわしくないとわかったら・・・」

プラティ 「わかったら?」

ヴァリラ 「・・・・・・。行くぞ」

プラティ 「ええ!どうするつもりなの?」






プラティ 「よかったねヴァリラ、お父さんが悪い人じゃなくて」

ヴァリラ 「ああ、まさか金の匠合がワイスタァンの経済と政治を支えていたとはな」

プラティ 「ええ!? ヴァリラ・・・ヴァリラのお父さんたちが何をしてるかわかったの!?
わたしにはさっぱりわからなかったよ」

ヴァリラ 「つまりだな、この街の鍛冶師は腕はいいが商売っ気がないんだ。
だから国が・・・剣の都がうるおうには誰かが金をもうけて、ワイスタァンにおさめないといけないんだよ」

プラティ 「なんで? みんなちゃんとかせいでるよ?」

ヴァリラ 「水路や塔は誰が修理する?」

プラティ 「鍛聖の人たちが大工さんたちにお願いするんだよね?」

ヴァリラ 「そうだ。その鍛聖の払う給料はどこから出ている?」

プラティ 「あ、そうか」

ヴァリラ 「その給料を稼ぐのが金の匠合の役割なんだ」

プラティ 「すごい大切だね」

ヴァリラ 「そういうことだ。しかし今日はつきあわせて悪かったな、恩に着るぞ・・・。
でなければオレは父親を誤解したままでいるところだった」

プラティ 「そんなの気にしないでよ、わたしとヴァリラは友達でしょ?」

ヴァリラ 「友達か・・・」

プラティ 「不満? じゃあ恋人のほうがいい?」

ヴァリラ 「・・・っ、からかうな、オレたちはライバルだ」

プラティ 「うん、ライバルだね!」

ヴァリラ 「次は試合で会おう」





▼ED


ヴァリラ 「調子はどうだ? 黒鉄の鍛聖サマ」

プラティ 「その呼び方、なんかテレちゃうよ。まだまだ見習い鍛聖でもっと覚えなくちゃいけないこといっぱいあるのに」

ヴァリラ 「仮にもオレに勝った女が情けないこと言うな」

プラティ 「えへへ、ごめん」

ヴァリラ 「情けないのはオレも同じか・・・。
おまえも永遠のライバルが永遠に鍛聖になれなくては格好がつかないだろう? 待っていろ、すぐに追いつくからな」

プラティ 「そんなのわたしは関係ないけどな。なんてったって、ヴァリラは大切な人だから」

ヴァリラ 「・・・・・・。言ってろ」

プラティ 「もしかして、
テレてる? テレてる?

ヴァリラ 「・・・うるさい!」

プラティ 「えへへ。でも、ヴァリラには金の匠合のこともあるし、大変だね・・・」

ヴァリラ 「望むところだ。金の匠合も鍛聖になることも、どちらも最高の仕事を見せてやる。そして、このワイスタァンを誰に恥じることのない剣の都にしてみせよう」




プラティ、おまえとふたりでな・・・






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