フェア&グラッド 夜会話



▼第三話

グラッド「しかし、お前の親父さんってのは何者なんだ? めっぽう強いってことは、なんとなくわかるんだが」
フェア「ただのバカよ、あんなの。常識がないから平気で無茶苦茶なことをするのよ」
グラッド「だからって、普通召喚術を剣で斬るか? 物理的にありえないだろう、さすがに」
フェア「滝をまっぷたつにしたのは、何回か見たかな。お前もやれ! ってしばらくの間、特訓をやらされたんだから」
グラッド「うへえ・・・。なんか、同じ人間とは思えないな、それ」
フェア「言わないでよぉ。私も時々、疑問を抱くんだから・・・」


バカの一言で片づけることができないのがムカつくのよね・・・



▼第四話

グラッド「お前が飛び出してったあの後な・・・俺たちも反省したよ。しっかりしてるからついついお前だけに負担かけさせてさ。ホント、悪かったな」
フェア「い、いいんだって!? そんなことは。もともと、わたしが自分でそうするって決めたことなんだし」
グラッド「そう、それだ! お前がそう言うから、ついつい俺なんかは無理させちまうんだ。でも、お前だってまだまだ子供なんだ」
フェア「もうっ。子供扱いは・・・」
グラッド「いいから聞け!?」
フェア「う・・・」
グラッド「きつかったらそれで潰れちまう前に頼ってくれりゃいい。もっと甘えたっていい。ただでさえ、お前は頑張り過ぎなんだ」
フェア「お兄ちゃん・・・」
グラッド「まあ、お前が平気って言うのなら、無理強いはできないけどな。これだけは覚えとけ。ミントさんもポムニットさんもそして、この俺も。お前たちのことを本当の妹や弟みたいに思ってるつもりだ。だから、遠慮するな。約束だぞ?」
フェア「う、うん・・・」


ありがとう・・・お兄ちゃん・・・



▼第五話

グラッド「はあ・・・」
フェア「どうしたの? 溜息なんかついちゃってさ」
グラッド「アロエリの姿を見ていたらな、使命って何なのか考えさせられて、さ。俺たち帝国軍人は帝国の平和を守っていくことが使命だ」
フェア「でもって、駐在軍人のグラッド兄ちゃんにとっては、この町の平和を守ることがそうなんだよね」
グラッド「ああ、そしてその使命を、俺は誇りに思っている。けどな、果たして俺が同じ立場になったならああまで、一途に使命を果たそうって思えるんだろうか。誇りを守るためにあそこまで真剣になれるんだろうか。ははは、ちょっと自信がない・・・」
フェア「いいんじゃないかな? 別に真似しなくても」
グラッド「え・・・」
フェア「グラッド兄ちゃんはグラッド兄ちゃんなりに、一所懸命この町のことを思って頑張ってるんでしょ。もしもの時のことなんて、考えなくてもいいんじゃないの? そうならないようにお兄ちゃんはここにいてくれるんだから、胸を張ってればいいんだよ!」
グラッド「そ、そうか? そうだよなっ? よーし・・・俺は俺なりに頑張ってやるぞ!」
フェア「うんうん」


その方が、ずっとお兄ちゃんらしいよ



▼第六話

フェア「旧王国って言葉を聞いた途端にさ・・・。グラッド兄ちゃん、なんであんなにも顔色を変えたの?」
グラッド「当たり前だろう!? 旧王国は帝国の敵対国なんだぞ。武力侵攻を受けたのもそれこそ数知れない」
フェア「でも、それって今よりもずっと昔のことなんでしょ? 最近は、そうでもないって思うけど」
グラッド「そんなことはないぞ。あの傀儡戦争でも旧王国の手引きによって悪魔たちの軍勢が国境を越えて、侵入しようとしたんだ」
フェア「!」
グラッド「国境警備隊の要である紫電部隊が撃退に成功してなかったら、この町だって襲われていたかもしれないぞ」
フェア「紫電か・・・。たしかお兄ちゃんの憧れてた部隊だよね。帝国で最初の女将軍が率いているんでしょ?」
グラッド「ああ、そうさ。陸戦隊なら、誰でも一度は憧れる部隊さ。その分、編入試験も訓練内容も厳しいってことなんだけどな」
フェア「そうなんだ・・・」
グラッド「なんにせよ、俺は帝国軍人の一人としてこの国の人々の平和を守りたいと願ってる。旧王国が敵対行為をとり続ける限りは戦わなきゃならない。そういうものなんだよ」


軍人の理屈からすれば怒るのも、当然だってことなのかな



▼第七話

フェア「いつかは、はっきりと聞いておこうと思ってたんだけど・・・。グラッド兄ちゃん、ミントお姉ちゃんが好き・・・なの?」
グラッド「ぶふっ!? ななっ、なにをっ! 馬鹿なことをっ!? 大体、俺がそんなそぶりを見せたことなんて・・・」
フェア「しょっちゅうじゃない。ミントお姉ちゃんと話してると、言葉使いおかしくなってくるし」
グラッド「・・・そうなのか?」
フェア「うん、まるわかり」
グラッド「なんてこった・・・」
フェア「でも、心配しなくてもミントお姉ちゃんは気づいてないよ。ミントお姉ちゃんだけの方がより正しいけどね」
グラッド「そ、それはそれで複雑な気も・・・」
フェア「てことは、やっぱりそうなんだ?」
グラッド「まあ、な・・・。正直、ひと目惚れしてしまってるんだ」
フェア「まあ、それも仕方ないかもね。お姉ちゃん、優しいし綺麗だから。男の人だったらきっと、誰だって好きになっちゃうよ」
グラッド「だろ!?」
フェア「ただ、たまに不可解な行動をして、面食らうこともあるけど」
グラッド「そういうところがまた、男心をくすぐるんだよ」
フェア「ふーん・・・」
グラッド「今の話、くれぐれもリシェルとかには秘密だぞ? 言いふらされたら、それこそ、巡回にも出られん・・・」
フェア「じゃあ、どうしてわたしには話してくれたの?」
グラッド「そりゃあ、お前はほら、口は固いだろうしさ。一番、身近っていうか、いろいろと相談にも乗ってくれそうだし」
フェア「それって、つまりお兄ちゃんの味方になれってこと?」
グラッド「なあ、頼むよ? 代わりに、お前にもしそんな相手ができたら協力してやるからさ」
フェア(むむむ・・・っ!)


グラッド「いでええぇぇぇっ!?」
フェア「そんな無神経じゃ助けてあげようって気にもならないよ! イーッ、だ!」
グラッド「お、おいっ!? どうして、お前が怒るんだよっ???」


お兄ちゃんの馬鹿! わたしだって、一応は女の子なんだぞ・・・



▼第八話

グラッド「ともかく、みんな無事で何よりだ」
フェア「うん、今回ばかりは正直もう駄目かと思っちゃったよ。アルバやシンゲンさんが来てくれなかったら打つ手がなかったし。それに・・・将軍があの状況を静観してなかったら。きっと、わたしたち負けていたって思う」
グラッド「忌々しいがその通りかもな。むかつくヤツだが騎士の誇りだけはもってたわけだ」
フェア「・・・・・・・・・」
グラッド「どうしたんだ? 元気がないぞ?」
フェア「グラッド兄ちゃんが最初に言ってたことがようやくわかったの。組織を敵に回すってことの恐ろしさがさ」
グラッド「おまえ・・・」
フェア「勢いだけでわたしが守ってみせるなんて言っちゃったけど、甘かったのかもしれない・・・」
グラッド「だからって、今さら逃げだしたいなんて考えてないよな?」
フェア「!」
グラッド「弱気になるのは仕方がないもんさ。恥ずかしいことなんかじゃない。ただ、その弱気に負けちまうのだけは絶対に駄目だ!負けたら、それをこの先、引きずってくことになるんだぞ?」
フェア「・・・っ」
グラッド「心配するなって。こうすると決めたのはお前一人じゃない。俺も、ミントさんもポムニットさんだって同じ気持ちなんだぞ」
フェア「お兄ちゃん・・・」
グラッド「正しいと感じたことを最後まで、思いっきりやり遂げるんだ。足りない部分は俺たちが全力でなんとかしてやる!」
フェア「・・・うんっ!」


思いっきり・・・それがわたしらしいやり方なんだもんね!



▼第十話

グラッド「彼女が、まさか悪魔だったとはな」
フェア「悪魔じゃないよ! 半魔だってば!」
グラッド「ああ、すまん。けどな・・・」
フェア「もしかして、ポムニットさんのこと軍に話すつもり?」
グラッド「ば、馬鹿言うなっ!? いくらなんでも、そこまで態度を急変なんてできるか。見損なうなよな?」
フェア「う、ゴメン・・・」
グラッド「でも、少しばかりびびっちまってるのは正直なところかな」
フェア「どうして!? ポムニットさんはポムニットさんだよ」
グラッド「わかってるさ。彼女は、守るべきこの町の住人だ。けどな、俺は実際に悪魔と戦ったことがあるんだよ」
フェア「!」
グラッド「昔、傀儡戦争の時の悪魔の残党の討伐に参加したんだ・・・わずか数体の悪魔を、いくつもの部隊でなんとか倒した。被害もすごくて、な」
フェア「・・・・・・・・・」
グラッド「俺だって、彼女を信じたいと思ってる。けど、同時に悪魔の恐ろしさというのも痛感してるんだよ。だから、どうしても構えてしまうんだ。それが、彼女の心を傷つけるだろうってわかっててもな」
フェア「お兄ちゃん・・・」


悪魔を知ってるからこそ、割り切れずに苦しんでるんだ・・・



▼第十一話

グラッド「より強い兵器の開発に軍が熱心だったことは知っていたさ・・・。学究都市の研究施設が重要な警備対象であることも説明された。だけど・・・だけどな!? なんで、あんなことが平然と行われていたりするんだよっ!?」
フェア「お兄ちゃん・・・」
グラッド「研究の為だからって、人の身体をあんな風に歪めちまうなんてやっちゃいけない!! 絶対に許されるようなことじゃないんだ!」
フェア「うん・・・教授が言ってたことが、何もかも本当のことだったら」
(研究の素材にされた多くの召喚獣たちはきっと・・・。・・・ッ!)
グラッド「お前らの言う通りだったよなぁ・・・。コーラルのことを軍の管理下に置くと決めていたなら、それこそお前らに顔向けできなくなるところだった・・・」
フェア「でもさ・・・グラッド兄ちゃんは結局、わたしたちのワガママを見逃してくれたじゃない? だから、責任を感じる必要なんて全然ないよ!」
グラッド「軍人の立場としては褒められた行為とは言えないけどな。もっとも、軍自体が褒められたもんじゃないのかもしれんが」
フェア「・・・・・・・・・」
グラッド「だが、軍がどれだけ碌でもないものとわかってもな・・・軍によって守られるべき、帝国の民にはなんの非もないんだ。だから、俺はまだ駐在軍人の任務を放棄したりはしない・・・安心したか?」
フェア「う、うんっ!」
グラッド「戦う術を持たぬ者に代わり、理不尽な暴虐へと立ち向かう者 それこそが軍人だ。紫電を率いているアズリア将軍の言葉だ。この言葉を信じて俺は、任務を全うしようと思ってる。お前らや、町の人々を最後まで守る為に!」


お兄ちゃんならなれるよ。みんなを守って戦える本物の軍人に・・・



▼第十三話

グラッド「橋の件については報告書を出したぞ。さすがに隠しておけることじゃなかったからな」
フェア「仕方ないよね。実際、部分的には壊れちゃったし」
グラッド「修理の件についてはテイラーさんが対応してくれるらしい。通行に支障がないよう、大急ぎで修繕してしまうそうだ」
フェア「じゃ、ひと安心だね。あの人は、そういう対応には骨惜しみをしないもんね」
グラッド「事実上、この町の領主みたいなもんだしなあ・・・。そういや、お前知ってたか? 町のあちこちにある壊れかけた給水施設、廃棄されるはずだったあれを修復したのもあの人らしいぞ」
フェア「うん、よーく知ってる。だって、あの施設叩き壊しちゃった大馬鹿者って父さんだし・・・」
グラッド「なんだってぇ!?」
フェア「聞いた話でしかわたしも知らないけど。前に、この町が貴族の別荘地候補に選ばれかけて、あの給水塔とかもそのために作られたものだったんだって。ところが、なにをトチ狂ったのやら、あの人ってば、それに反対して、大騒動を起こした挙げ句に」
グラッド「ぶっ壊した・・・っていうのか???」
フェア「テイラーさんはそう言って、いつもわたしを責めてるよ。別荘の誘致が成功していたら、町はもっと栄えていた、大損失だ、ってね」
グラッド「うへえ・・・」
フェア「父さんが、旅に出ることになった原因のひとつには、そういう理由もあるみたいだよ。損をした関係者には今でも、恨まれてるみたいだし・・・」
グラッド「なんていうか豪快な一家だよな、お前んトコって」
フェア「一緒にしないで! あの人が非常識なだけだってば!?」


今頃、どこでなにをしてるのやら、まったく・・・



▼第十四話

グラッド「やれやれ・・・とうとう本拠地ごと敵のおでましか。いつかはこうなるって覚悟はしていたけど、きっついよなあ」
フェア「ゴメン・・・。全部、わたしたちのせいだよね・・・。お兄ちゃんたちの言うことを聞かずに意地ばっかり張り続けてきたから、こんな騒ぎに・・・」
グラッド「ま、待て待てっ!? 俺は、お前を責めてるワケじゃないぞ!? つい、愚痴がこぼれただけでな」
フェア「けど・・・っ」
グラッド「そりゃ、確かにお前たちは、意地を張ったかもしれない。だが、そうすることを許しちまってる時点で俺だって同罪なんだ。言ってるだろ? 覚悟はしてた、ってな」
フェア「お兄ちゃん・・・」
グラッド「しかし、さすがにこれ以上、騒ぎが大きくなっちまうと、俺一人の力だけではもう、庇ってやれないかもしれんな」
フェア「え・・・」
グラッド「現に、町の人たちが城を見たせいで不安になってる。旅人たちの噂話になって広まるのもそう遠くないだろう」
フェア「そう、だよね・・・」
グラッド「本部への報告は何とかここまで誤魔化してきたけど、正式に調査の命令が出たら、俺はそれに従わなきゃならない。軍人、だからな。すまん・・・」
フェア「気にしないで!? お兄ちゃんばかりに無理させられないよ。すごく感謝してるよ、わたしたちのワガママ聞いてくれて・・・」
グラッド「けどな、軍が動くにはまだ時間があるはずだ。だから、なんとしてもそれまでにこの騒ぎを終わらせるんだ! そうすりゃ、あとは俺が始末書を書いてカタがつくはずさ」
フェア「うん・・・」
グラッド「しっかり頼むぜ! いつもの、お前みたいにな?」
フェア「・・・うんっ!」


終わらせなくちゃ!
お兄ちゃんのためにも、絶対に・・・



▼第十六話イベント

グラッド「そうか・・・。こうして、直に話されちまったら信じるしかないな。お前が響界種だったなんてなあ」
フェア「・・・・・・・・・」
グラッド「だとしたら、まず礼を言わなくちゃいかんだろうな」
フェア「え?」
グラッド「トレイユを守る駐在軍人として感謝いたします! 本官、ならびに町の住人の命を救ってくださって本当に、ありがとうございましたッ!!」
フェア「や、やめてよ!? そんな、大袈裟なことしてないってば!?」
グラッド「いや、こういうことはきちんと形式に則っておかないと・・・」
フェア「いいんだってば! わたしと、お兄ちゃんの仲でしょ?」
グラッド「まあ・・・それもそうだよな?」
フェア「まったく・・・」
グラッド「それで、お前はどうするつもりだ? やっぱ、ギアンの誘いを受けるのか?」
フェア「ううん、それはなんか違うって思ってる」
グラッド「なら、悩むことなんてないじゃないか」
フェア「そんなに単純なことじゃないよ!? わたしはここにいたい。でも、周りのみんなに迷惑が・・・」
グラッド「迷惑になるなんて誰が、お前に言った?」
フェア「え・・・」
グラッド「お前が一人でそう思い込んでる、それだけだろ」
フェア「でも、普通に考えたら絶対に・・・」
グラッド「確かにな。でも、そういう場合真っ先に関わるのは駐在軍人の俺だ。なんとかしてやるよ。だから、余計なこと心配すんなって!」
フェア「お兄ちゃん・・・」
グラッド「厄介事だったら慣れっこだしな。それに・・・俺とお前の仲だろ?」
フェア「で、でも・・・っ それじゃあ、ずっとお兄ちゃんに・・・」
グラッド「いいんだよ、それで。迷惑なんて考えるから悩んだりするんだよ。素直に甘えとけよ? 俺は、お前の兄ちゃんなんだからさ」
フェア「う・・・っ、うううっ、うわあああぁぁっ!! お兄、ちゃん・・・っ、グラッド兄ちゃんっ! うわああぁぁん!!」
グラッド「よく我慢したな。でも、泣きたい時は泣いてもいいんだ。いつだって、俺はお前の味方だからな」
フェア「う・・・ん・・・っ」



▼第十八話

グラッド「うん・・・。これで、現在までの報告書はまとまった。あとは、警備隊が到着するまでの、時間稼ぎの方法だよなぁ」
フェア「・・・・・・・・・」
グラッド「大道都市を経由するように連絡するとして、理由付けは・・・」
フェア「寝ないの? お兄ちゃん」
グラッド「ああ、やることがまだ沢山・・・って、のわあぁーっ!? び、びっくりしたっ!」
フェア「ご、ゴメンっ! 別におどかすつもりじゃなかったんだけど、ただ、なんかすごく忙しそうだから、声かけづらくて」
グラッド「それ以前にな、こんな時間に、お前がここにいるのが問題だろ? 朝に備えてちゃんと休んでおかないと駄目だろうが?」
フェア「わかってる、けど眠れなくて・・・」
グラッド「まあ・・・それも仕方がないか。じゃあ、せっかくだしなんか軽めの夜食でも作ってくれよ?」
フェア「・・・うんっ!」
グラッド「腹の底からあったまるようなもんがいいなあ」
フェア「任せといて♪」


グラッド「ふぅ・・・っ、ごちそうさん。しっかし相変わらずお前の作る飯は美味いよなあ」
フェア「そういえば、お兄ちゃんって、ここんとこウチでゴハン食べてないよね。やっぱ、ゆっくりしてられないくらい忙しいの?」
グラッド「それもあるけどな。まあ、一番の理由は安月給の中から、ちょっとばかし貯金を始めたせいなんだよ」
フェア「貯金?」
グラッド「軍学校の上級科の編入試験を受けてみようと思ってな。そのために必要な学費とかを、用意してるのさ」
フェア「上級科って・・・なんでまた、急に?」
グラッド「別に、急に決めたことでもないさ。ほれ、お前にも何度か話したことがあるだろう? 俺の夢は、アズリア将軍が率いる紫電に入る事だって」
フェア「あ・・・」


グラッド「今まではな、叶わぬ夢のつもりでいたんだ。ただ、願望を言ってただけで、本気で努力をしてはこなかった。でもな、望みを叶える為に必死で頑張り続けているお前の姿を見ていて、思ったんだよ。今のまんまで本当にいいのか?ってな」
フェア「お兄ちゃん・・・」
グラッド「できる、できないじゃなくって、やってみる。そう決めたから、とりあえず、もう一度勉強を始めてみることにしたんだよ」
フェア「そっか・・・。だけど、編入試験に合格しちゃったら、お兄ちゃんはこの村の駐在軍人をやめちゃうの?」
グラッド「そういうことになっちまうな」
フェア「・・・・・・・・・」
グラッド「しょげた顔するなよ? 別に今すぐ、どうこうなるわけじゃないぞ。次の季節の巡りがこなけりゃ、試験を受けられないし。そもそも、合格する保証だってないんだぞ」
フェア「できるよ・・・お兄ちゃんなら・・・。あんなにも一生懸命町のために頑張ってこれたんだもん。その頑張りがあれば編入試験だって、絶対大丈夫だよ。だけど・・・なんでなのかな・・・。お兄ちゃんの夢がかなうことは、嬉しいって思ってるのに。なんで、わたし・・・こんなにも悲しいって思っちゃうのかな?」
グラッド「フェア・・・お前、泣いて・・・」
フェア「ご、ごめんね・・・っ、なんか、変なわたしでごめんね・・・っ? だけど、お兄ちゃんがいなくなっちゃうって思ったら・・・涙が、止まらないの。なんで、なんでかな? おかしいよ・・・っ」
グラッド「フェア・・・」


フェア「わかってるんだもん。お兄ちゃんは・・・ミントお姉ちゃんのことが好きで、だからどう頑張ったって勝てないもんっ、妹みたいな、わたしじゃ、絶対に・・・」
グラッド「!」
フェア「二人とも、わたし大好きだから、側にいてくれさえすれば、それで、よかったのに。満足しようってずっと思ってたのに・・・。なのに、なのに・・・う、ううう・・・」
グラッド「 俺って、やっぱり馬鹿過ぎるよな。散々、お前を傷つけてたことにも気が付かないで、結局、泣かせちまった。でもな・・・ひとつだけ、お前は勘違いしてるぞ?」
フェア「・・・え?」
グラッド「確かに、俺はミントさんのことが好きだったよ。だけど、それはさっきの夢の話と同じで・・・ただ、憧れを口にしていただけだったんだ。叶える努力だって全然出来ちゃいない。それにな・・・お前のことだって 俺は、同じぐらいに大切に思ってるんだ」
フェア「え!?」
グラッド「お前の欲しかった好きって気持ちとはズレちまってるけど。でも、それは気が付かなかっただけのことで、頑張れば、きっと取り返しのつくものだって思ってる」
フェア「そ、それって・・・」
グラッド「まあ、あれだ・・・仕切り直しにさせてくれってことさ。フェア。これからは、ちゃんとお前のことを、妹なんかじゃなくて一人の女の子としてみていくからな」
フェア「お兄ちゃん・・・」
グラッド「グラッドでいいよ」
フェア「だ、だって・・・わたしだって、急には変われないよ・・・。恥ずかしいし・・・」
グラッド「あはははっ、だったらゆっくりと変わっていくことにするか? その方が、きっと俺たちらしいしな」
フェア「うん・・・」
グラッド「頑張ろうな? 明日の戦いで、絶対決着をつけるんだ」
フェア「うん、頑張ろう!」


わたしとお兄ちゃん それぞれの夢を叶えていくために・・・




▼ED

リシェル「そう言えば、そろそろ時間なんじゃない?」
フェア「そうだね。そろそろ行かないとマズイかも。きっと、お腹すかせてへばってるだろうし」
リシェル「愛妻弁当かあ。いい身分よねえ・・・」
フェア「そ、そんなんじゃないってばぁ!? わたしは、ただお兄ちゃんの応援をしてるだけで・・・」
リシェル「はいはい、いいからさっさと届けに行ってあげなさいって」
フェア「もぉ・・・っ!」


リシェル「しかし、あのコってあれでバレてないつもりかしら?」
ルシアン「意識しすぎてるから、かえって不自然になってるのにねえ」
リシェル「そういうあんたは笑ってる場合なワケ? このままだと、勝ち目なくなっちゃうわよ?」
ルシアン「なくなる以前に勝負にならないよ、悔しいけどね。だから、応援する。そう決めたんだ」
リシェル「ふーん・・・ま、それもあんたらしいか」




フェア「お待たせっ!」
グラッド「おーそーいー・・・」
フェア「ゴメン、ゴメン。お店の方、どうにも手が離せなくってさ。だけど、そのぶん今日は豪華だぞ♪」
グラッド「おーっ、すげぇ!?」
フェア「夜にパーティの予約が入ってるから、凝った品揃えにできたの。さあ、食べて、食べて」
グラッド「いっただきまぁーす♪」


グラッド「ごちそーさん…今日もうまかったよ」
フェア「えへへ、まあ当然だけどね。・・・で、どう? 試験勉強の方は進んでる?」
グラッド「うーん・・・バッチリと言い切れるほどではないけど、なんとか、目途は立ってきたと思う」
フェア「そっか・・・」
グラッド「できれば、一発で合格したいからなあ。若いうちじゃないと合格しても訓練にはついていけないし。それに・・・」
フェア「それに?」
グラッド「今のままの安月給じゃもう一人食わせるには心もとないからな」
フェア「あ・・・。で、でも・・・ほらっ、お店の方も順調にいってるしさ。二人で協力していけば食べていくくらいならなんとでも・・・」
グラッド「今はそれでよくても将来的には、そうもいかないだろ? 家族ってものはにぎやかなほうがいいもんだしな」
フェア「そ、それは・・・そう、だけど・・・」
グラッド「さみしい思いをさせてすまないとは思ってる。けどな・・・もう少しだけでいい。俺を信じて、待っててくれないか? 必ず、夢を叶えてお前を迎えにくるよ。そして、その時には待たせちまったぶんめいっぱい、幸せにしてやるからな」
フェア「グラッド・・・お兄ちゃん・・・」
グラッド「お兄ちゃんは余計だぞ」
フェア「う、うん・・・わたし、待ってるよ。グラッド・・・」


(鐘の音)


グラッド「おっと・・・そろそろ、任務に戻らないとな」
フェア「いってらっしゃい。見回り、頑張ってね」
グラッド「ああ、いってくる!」








俺は俺の夢を絶対に叶えてみせる。

お前や新しい家族達のための未来を、守ってやることができるように・・・







『夢を見ようよ!』


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