ライ&リシェル 夜会話 |
▼第三話 リシェル「そっか・・・。リュームの親はもういないんだ・・・」 ライ「親元に帰してやるのは無理になっちまったな」 リシェル「そうね。けど、だとしたらこの先どうするの? あたしは、ずっと面倒みたっていいと思ってるけどさ。ポムニットやグラッドさんからしてみてば話が違うってことになっちゃわない?」 ライ「けど、だからって中途半端で放り出すつもりなんてねえよ。少なくとも他の御使いってのが見つかるまでは面倒みてやるつもりさ」 リシェル「よかった・・・」 ライ「最悪、そいつらが出てこなかった時にはクソ親父の野郎をふんづかまえて責任とらせてやる。なんてったって諸悪の根元だからな!」 リシェル「あははは・・・」 ったく・・・。無責任な親を持つと苦労するぜ・・・ ▼第四話 リシェル「そっか・・・。セクター先生に叱られたんだ。道理で、やたら素直に自分から謝ったわけね」 ライ「あの先生にだけはどうしても頭があがらねーんだよなあ。ガキの頃からさんざん怒られてる相手だしな」 リシェル「わかるなあ、それ。あたしも先生の前じゃ自然に言葉使いとか改まっちゃうしさ」 ライ「二人そろってバケツもって立たされたもんな」 リシェル「あの頃が、一番楽しかったなあ。毎日、どんなことして楽しく遊ぶか、そんなことばっか考えてさ。なんにも知らない子供だったから、泣くのも怒るのも自由だった」 ライ「今はもう、そういうワケにはいかねーしな。中途半端に大人だから今更ガキっぽくもしていられねえ。もしかすると、一番めんどくさい時期なのかもな、オレたち」 リシェル「ま、偉そうにこんな話をしてる時点で、子供とは言えないわね」 ライ「ははっ、そりゃそうだ」 それでも、多分まわりから見たらガキなんだろうな・・・ ▼第五話 リシェル「あーっ、もぉ! なんなのよ、あの暴力女はっ!!」 ライ「まだ怒ってんのかよ」 リシェル「あったりまえよ!偉そうな口を叩いたくせして、あっさり出戻っちゃってさ。あたしだったら、絶対恥ずかしくって、顔も見せられないのに」 ライ「そんな恥を被ってもあいつは戻ってくると決めたんだぜ。そんだけ、反省してるってことじゃねえか?」 リシェル「それは・・・」 ライ「カンベンしてやれよ」 リシェル「わかったわよ・・・。でも、ポムニットにはちゃんと謝ってほしいものだわね。あの子、ものすごく心配してたのに」 ライ「そうだな。そのことはちゃんとアロエリに言うよ。けど、お前って・・・」 リシェル「な、なによ?」 ライ「なんだかんだ言ってポムニットさんのこと大事にしてるよな。普段はあれだけ迷惑をかけまくってるくせに」 リシェル「あ、あたしは特別っ! だって、あの子はうちのメイドなんだし、迷惑かけるのが義務でお世話をするのが権利なんだからねっ!?」 ライ「ぐちゃぐちゃだぞ? お前の言ってる理屈」 リシェル「うるさいっ、うるさいうるさあぁーいっ!!」 結局のとこ、こいつはポムニットさんに甘えてるんだよなあ・・・ ▼第六話 リシェル「怪我人を置いてさっさと行っちゃうなんてさ。ホント、あいつらって身勝手すぎるわよね」 ライ「そんな言い方するなよ。急がなきゃならない任務だから、仕方なくそうしたんだろ?」 リシェル「任務だ、急ぎだ、ってそんなのは言いわけにしかならないわよ! 置いていかれる側からすれば、慰めにもならないわ・・・」 ライ「リシェル・・・」 リシェル「わかっちゃうのよ。アルバの気持ち。いくら上辺を取り繕って貰っても、納得したつもりでも、置いてけぼりにされた寂しさは、やっぱり消えたりはしないよ。あんただって、それは知ってるはずでしょ?」 ライ「まあ、な・・・。けど、不貞腐れてもなんにも始まらねーし、割り切るしかねえって」 リシェル「なによ、大人ぶってさ。どうせ、あたしは不貞腐れてばかりの子供ですよーだっ!」 ライ「ったく・・・。けど、ある意味じゃあ大したもんかもな」 リシェル「え?」 ライ「そうやって、他人のために、腹を立ててやれることがだよ。自分のことでさえはっきりと不満を口にするのは、なかなか出来るもんじゃねーしな」 リシェル「何よそれ。つまり、単純だって言いたいワケ?」 ライ「絡むなって。これでも、褒めてるつもりなんだからさ。単純だから悪いってもんでもねーだろ?」 リシェル「そりゃまあ・・・そうだけど。なんだか、ちっとも褒められてる気がしないなあ」 ライ「ったく・・・。めんどくさいヤツだなお前って・・・」 リシェル「あーっ!? 今のは、間違いなく貶したでしょ!?」 あいててっ!? こらっ、引っ掻くな!おい・・・っ!? ▼第七話 リシェル「まさか機械兵士まで出てきちゃうなんて思わなかったわよ」 ライ「それなんだけどな、出くわした相手があんなんだったから、どうも機械兵士の怖さってわからねーんだよな。あのグランバルドってなんか間の抜けた喋り方してたし。機械人形についてもまあ、似たような感想なんだけど。ぶっちゃけ、お前が言うほど物騒なもんなのか?」 リシェル「あーっ、なによ? 疑ってるワケ? そりゃ、確かにあの連中はちょっと抜けてたけどさ。でも、実際の話機械兵士ってのは本当に恐ろしいのよ。王国時代よりも前にある都市が機械兵士の軍団に襲撃されてね、ひと晩で瓦礫の山にされちゃったんだって」 ライ「本当かよ、それ?」 リシェル「派閥の文献に書いてあったんだもん、デタラメじゃないよ」 ライ「しかし、そいつらどうやって退治されたんだ?」 リシェル「勇敢な騎士たちが機械兵士を操ってた移動要塞に侵入して、制御装置を破壊して活動を止めたんだって。ただ、無事に帰ってこられたのは見習いの騎士一人だけで、他の騎士はみんな不思議な光に包まれて消えちゃったそうよ」 ライ「胡散臭い話だな、やっぱ・・・」 リシェル「ホントだってば! ちゃんと騎士団の名前も載ってたし! たしか、エ・・・エストなんとかっていう名前のはずよ」 ライ「わかった、わかった。なんにせよ、舐めてかからないようには気をつけるさ」 リシェル「うん、それが賢明ね」 ああいう連中だからなんとか勝ててるって部分もあるしな・・・ ▼第八話 ライ「しっかし、お前も無茶しやがるなあ。ポムニットさんがいくら心配だからって飛び出すなんてさ」 リシェル「だって、本当に心配だったんだもん、しょうがないでしょ」 ライ「まあ、気持ちはよくわかるぜ。責める気もねえよ。でも、次もああしてうまく助けが入るとは限らねーからな」 リシェル「だね・・・。アルバとシンゲンには感謝しないと」 ライ「今日みたいなことが二度と起こらないようにするためにも、一刻も早く、残った御使いを見つけだすしかなさそうだな。リュームが守護竜の力を全部継承しちまえば、あいつらだって手出しができなくなるだろうし」 リシェル「でも、そうしたらあの子とは、お別れになっちゃうんだよね」 ライ「リシェル・・・」 リシェル「わかってるよ。いつまでも、今のままじゃいられないのは。でも、やっぱり寂しいよ。こんな形じゃなくて、もっと別の出会いならよかったのにね」 ライ「だな・・・」 それはありえないってわかってても、やっぱ辛いよな・・・ ▼第十一話 ライ「ロレイラルの機械で強化された兵士、か。まさか、先生がそんなものにされていたなんてな・・・」 リシェル「うん、あたしもまだ信じられないくらいよ」 ライ「先生のあの怪我は、軍人だった時のものだって聞いていたし。必死に隠し続けてきたんだろうな。杖をついていたのも、そのための演技だったのかもしれない」 リシェル「ううん、それは違うとあたしは思うんだ」 ライ「え?」 リシェル「機械は強力になるほど、そのぶん精密になっていくものなのよ。定期的に整備しないと動作に支障が出るし、壊れたりもするの。きっと、そのせいで本当に具合が悪くなってたんだよ」 ライ「でも、戦ってる時は全然そんな様子には見えなかったぞ?」 リシェル「復讐に向ける執念で限界を超えているのか、あるいは・・・壊れても構わないって覚悟してるとか・・・」 ライ「バカ野郎っ!? お前、そんなことあるわけが・・・」 リシェル「・・・・・・・・・」 ライ「・・・くッ!!」 リシェル「パパから・・・聞いた話なんだけどさ。何年か前に起こった『傀儡戦争』のこと覚えてる?」 ライ「ああ、悪魔が侵略してきたっていうアレだな」 リシェル「あの時、悪魔たちが本当に狙っていたのはロレイラルの技術で、召喚獣を機界の技術で戦闘兵器に作り替える方法だったらしいの」 ライ「!?」 リシェル「『ゲイル計画』って呼ばれてたんだって。先生が受けた処置がどんなものかは知らないけど・・・目指していた目的は多分、同じだろうね」 ライ「どっちにしたって許せないことには違いねーよ・・・。命あるものを兵器に作り替えちまう技術なんてのはよッ!」 リシェル「だよね・・・。『ゲイル計画』が間違っていたって気づいたから、昔の召喚師たちはその技術を封印して隠してきたんだもの。同じ間違いを繰り返すなんて、馬鹿なことはしちゃ駄目だよね?」 ライ「あったりまえだッ!!」 それじゃ、あまりにも救いようがなさすぎるじゃねえかよ・・・ ▼第十三話 ライ「結局、あれっきり先生は見つからず終いか・・・」 リシェル「仕方ないわよ。偏光迷彩なんて使われちゃったら」 ライ「なあ、それってなんなんだ?」 リシェル「光を曲げることで姿を隠す、機界の偽装技術のことよ。人間の目じゃ、まず見つけることは無理なんじゃないかな」 ライ「そっか・・・。なんか、そういう説明聞くと、嫌でも実感させられちまうよな。先生が、やっぱ普通の身体じゃないってことをさ」 リシェル「・・・だね。だけど、あたしたちにとっては、やっぱり先生は先生だよね?」 ライ「そんなの当たり前だ。考えるまでもねーよ」 リシェル「あーっ、こんなことになるって前もってわかっていたんなら、機界の科学技術とかもっと勉強しとけばよかった! そしたら、あたしが先生を治療してあげられたのに」 ライ「リシェル・・・。なら、今からそのぶん取り戻せばいいだけのことじゃねえか?」 リシェル「え?」 ライ「まだ、充分に間に合う・・・そうだろ?」 リシェル「う、うんっ! そうだよねっ? 間に合うよね!?」 ライ「とにかく、オレは力ずくでも先生を引っ張り戻してくる。お前の出番はそれからだぜ?」 リシェル「ふん、あたしのこと誰だと思ってるワケ? 金の派閥の幹部職、機界の召喚師ブロンクス家をしょって立つ、うるわしき紅一点リシェル様よっ! ビシッと決めるから、まっかせなさいっ!」 ライ「おう、その意気だぜ!」 そのためにも、絶対に先生をここに連れてこないとな! ▼第十四話 リシェル「なんなのよ、もおっ。ギアンのヤローめ! 角が生えてぴかーっと光ったら元通りなんてさあ。反則よっ、反則っ! インチキするのにもほどがあるわよ!!」 ライ「まあ、アレには正直びびったけどもな。逆に納得もしたよ。アイツの不思議な力の秘密もわかったしな」 リシェル「はぐれ召喚獣に・・・響界種か・・・。今まで、あたしそういうこと真面目に考えたことなかった。原因を作った召喚師の一人なのにね・・・」 ライ「別に、オマエが責任感じる必要なんてねーだろうがよ」 リシェル「ありがと。だけど、無関係じゃないよ。召喚師である以上知らんぷりできない問題だって思うの。ううん、きっと知っておかなきゃいけないことなんだ」 ライ「リシェル・・・」 リシェル「ポムニットやエニシア、カサスさん、みんな辛い思いをしてる。クラウレとかギアンもそりゃあ、ムカつくしうっとおしいけどさ。そうなったのは、多分あたしたち人間のせいでもあるんだと思う」 ライ「そうかもな・・・。でも、だからこそどこかで止めなくちゃいけないんだ。ギアンが何を望んでいるのかは、オレにもまだわからないけど。そのために、悲しい思いをしてる奴らが確かにいるんだ。オレは、そいつらを助けてやりたいんだ」 リシェル「うん・・・。まあ、エニシアだけはなんとしてでも助けてあげたいわよねー? なんていったって可哀相なお姫様だもんねー?」 ライ「な、なに言ってんだよ。オレは、そんなこと考えてなんか・・・」 リシェル「なんで、そこで赤くなるかな・・・」 ライ「なんだよ、おい? お前こそ、なんでムッとするんだよ?」 リシェル「べっつにーっ! なんでもないですよぉーっだっ!!」 ライ「待てよ、リシェル!? おい、待てってば!?」 なんなんだよ・・・。まったく・・・ ▼第十六話 リシェル「・・・っく、ひっく。う、ううう・・・っ。・・・っ!?」 ライ 「こんなところに居たのかよ。ったく・・・ずいぶん捜したんだぜ?」 リシェル「あ、あんたこそ!? なに、もたもたしてたのよッ!? 黙ったまんまで部屋に閉じこもっていじけてたくせして。おかげで、みんな調子が狂っちゃったじゃない!?」 ライ 「だったら、なんでさっきみたく、呼びに来なかったんだよ? いつもみたいになんで、怒鳴りつけなかったんだよ!?」 リシェル「そんなの、できっこないじゃない!? 本気で落ち込んでいるあんたに、そんなことできないわよッ!?」 ライ 「!?」 リシェル「みくび、らないでよ。あたしは、ちゃんとわかってる・・・っ。あんたが、どれだけ苦しんでる、のか。怖がってる、のか。あたしが・・・っ、誰より、一番っ、わかってる・・・っ」 ライ 「リシェル・・・」 リシェル「なんでよぉっ!? なんで、あんたばかりそうなのよぉっ!? ひどいじゃない!? 不公平じゃない!? うううぅ・・・っ。うわああああぁぁぁっ!!!!」 ライ 「・・・落ち着いたか?」 リシェル「う、ん・・・っ」 ライ 「ったく、どうしてお前が泣くんだよ」 リシェル「だって・・・嫌だったんだもん」 ライ 「オレが、響界種だったことがか?」 リシェル「違うわよっ!? そんなの、ちっとも気にしてないわよ。ただ、あんたがそれを変に気にして、そのせいで・・・どっかに行っちゃうのだけは、絶対に嫌だったんだもん。ポムニットの時みたいに・・・」 ライ 「あ・・・」 リシェル「あたしは、ずっとあんたに甘えてた。あんた、優しいから。無茶なこと言っても実行しちゃうから。頼りっぱなしだった。お姉さんぶってるクセして・・・。ちっとも、助けてあげてない・・・」 ライ 「そんなことないぜ? おまえは、充分助けてくれてるよ」 リシェル「でも・・・っ」 ライ 「今だって、オレの代わりに泣いてくれた。オレが不安だったこと全部、先回りしてさ。関係ないって言ってくれた。怖がらなくてもいいって、オレに教えてくれた」 リシェル「ライ・・・」 ライ 「心配すんなって。オレは、どこにもいかねーよ。オレの居場所はここだけなんだ。いるべき場所であり、いたい場所なんだ」 リシェル「・・・本当に?」 ライ 「確認しなくたってお前なら、ちゃんと知ってるだろーが? オレが、嘘つくの大嫌いだって、な」 リシェル「・・・うんっ!」 ▼第十八話 リシェル「ふーん、やっぱ眠れずにいたんだ?」 ライ「お前、なんでこんなところにいるんだよ?」 リシェル「決まってるじゃない。あんたが帰ってくるの待っててあげたのよ。どうせ、こんなことだろうって思ってたから、わざわざ話し相手になりに来てあげたの。感謝なさいよね?」 ライ「リシェル・・・」 リシェル「あんたって、昔から人前じゃ平気で大口かましちゃうくせに、一人になった途端に色々と余計なことを考えちゃうのよねえ」 ライ「それは、お前だって同じだろーがよ? その場の勢いとノリでとんでもないことを安請けあいしてさ、その辻褄合わせにオレやルシアンは苦労しっぱなしだったぜ」 リシェル「そんなの当たり前よ。それが、あんたたちの役目なんだもん」 ライ「ったく・・・」 ライ/リシェル「・・・ぷっ、くくくっ、あっははははははっ!」 リシェル「ホント脳天気だよねえ、あたしも、あんたもさ」 ライ「ああ、まったくだぜ。あれだけ色んなこと散々経験して、その上、今からその総仕上げの決戦に行こうってのにさ。お前の顔見たら一発で緊張感なんかぶっとんじまったよ」 リシェル「はいはい、それは何よりですこと」 ライ「ありがとな、リシェル」 リシェル「な、何よ? 急に改まったりして」 ライ「何って・・・まあ、その、なんだ、色々だよ・・・。あの日、お前と一緒にリュームを拾ってからさ、本当に色んなことを経験したし、知らずにいたことも知って。オレなりに、気づいたことや、考えたことも沢山あってさ。まあ、とにかく・・・お前に礼を言いたい気分になったんだよ。こんな時じゃなきゃ多分、言う気になんかなれそうにないしな」 リシェル「ライ・・・」 ライ「・・・なんだよ? なんか、調子狂うな。さっきみたいに『当然よ!』とか言わねーのかよ?」 リシェル「いいでしょ、別に。たまには、そういう気分の時もあるの」 ライ「そういうもんかよ?」 リシェル「そういうものよ」 ライ「ふーん・・・」 リシェル「ねえ・・・この先のこととか考えてるの?」 ライ「この先?」 リシェル「戦いに決着がついた、それから先のことよ」 ライ「そっか・・・そういうことは全然考えてなかったな」 リシェル「何よ、それ・・・脳天気にも程があるんじゃないの?」 ライ「へいへい、どうもすみませんでした。けどよ・・・改めて考える必要もないんじゃねーかな」 リシェル「え?」 ライ「例えは悪いけど、この騒動は、お祭りみたいなもんだよ。馬鹿みたいな大騒ぎの後は、いつもの日常が戻ってくるだけさ。いつか、お前が返して欲しがってた普通の毎日が、な」 リシェル「ライ・・・」 ライ「オレは、宿屋の雇われ店長に戻って、毎日美味い料理を作って。オーナーの小言に顔を顰めつつ、なんとか切り盛りして・・・」 リシェル「お爺さんになるまでまっとうに人生を生きていく! ・・・だよね? 」 ライ「平凡で、退屈で年寄りくさいかもしれないけどな?」 リシェル「でも、それが一番あんたらしいかもしれないよね」 ライ「リシェル・・・」 リシェル「まあ、アレよ? あたしも、あたしで思うこともあってさ。そういう生き方もいいかも、なーんて思ったりしてるの」 ライ「そっか・・・」 リシェル「・・・あんたと一緒だったら平凡で退屈なんてことなさそうだし・・・」 ライ「は?」 リシェル「あっはははっ♪ なんでもないないっ、こっちの話っ」 ライ「???」 リシェル「なんにせよ、あんたはあたしの家来みたいなもんなんだから、せいぜい、これからも励みなさいよね?」 ライ「あのなあ・・・」 リシェル「とりあえず、勝利のパーティでは、好物を沢山作ること! いいわね?」 ライ「ったく・・・しょうがねーなぁ。その代わり、死んでも無事に戻ってくるって約束しろよな?」 リシェル「うん、あんたもね♪」 ▼ED ライ/リシェル「つ・・・っ、つかれたあぁ・・・っ」 ルシアン「二人とも、ほんとにお疲れ様」 ライ「おう、ルシアンもお疲れさん。ミルリーフもな?」 ミルリーフ「えへへっ♪」 リシェル「にしても、最近のお昼時って、戦場そのものよねえ。ちょっと前まではお客が列を作るなんてありえなかったもん」 ルシアン「それはそうだよ! なんたって、今のライさんはミュランスの星が認めた、帝国最年少の有名料理人だもの。噂を聞いて、遠くから食べに来る人たちもいるくらいなんだよ」 リシェル「有名料理人ねぇ・・・」 ライ「そんなのは、他人が勝手に騒いでるだけさ。オレはただ、ずっとこの町でうまいメシを作り続けながら、もっとみんなに喜んでもらいたいだけ。それだけでいいんだ」 ミルリーフ「それじゃ、ぐるめのオジサンとの約束はどうするの? 本格的に料理の修行にきなさいって、手紙で誘われてるでしょ?」 ライ「ジイさんには悪いけど、もうしばらく待ってもらうつもりさ。あの騒ぎで壊れた町を元通りにするために働いてる人達に、うまいメシを食べて、もっと頑張って貰いたいからな」 ミルリーフ「そっか・・・」 ライ「まあ、とにかく今はひと休みにしようぜ。夜になったら、また大忙しなんだからな」 リシェル/ルシアン「はーい・・・」 ライ「ふわあぁ・・・っ」 リシェル「でっかいアクビねぇ。アゴ外れちゃうわよ?」 ライ「いいだろ、別に。大あくびぐらいしたってさ。お前相手に今更気どったって、仕方ねーだろが」 リシェル「親しき仲にも礼儀ありっていう鬼妖界の格言、あんた、知ってる?」 ライ「なんだそりゃ???」 リシェル「はあ・・・。いいわよ、もう・・・。でも、最近の忙しさは、ちょっと殺人的よね。その分儲かって、パパはホクホク顔になっちゃってるけど」 ライ「確かに。注意はされても、怒鳴られることは減ったかな。それはそれで、なんか物足りない気もするんだけどな」 リシェル「呼び出されるのが当たり前って感じだったもんねえ。でもさ、いいじゃん? それだけあんたのこと認めてくれてんだし、あたしとしてもひと安心、かな」 ライ「一人前だぞって胸を張るにはまだまだだけどな」 リシェル「お、謙虚じゃん?」 ライ「そりゃあな・・・。前は、認められたくてムキになってたけど、今はもう、不思議とそういう焦りは消えちまったんだよなあ」 リシェル「ふーん・・・。きっと、それがさ、大人になったって証拠かもよ?」 ライ「・・・そうか?」 リシェル「多分、ね。ま、変に考えたりしなくても、別にいいんじゃない? ガキでも大人でも、あんたはあんたに変わりないんだし」 ライ「ははっ、そうだよな」 リシェル「・・・・・・・・・」 ライ「けどさ、変わったのはお前もだろうが。ポムニットさんから教えてもらったぞ、オーナーと・・・親父さんと、仲直りしたんだって?」 リシェル「べ、別にそんな大げさなことじゃないってば!? ただ、無闇やたらに突っ張っていても、疲れるだけだって気づいて、馬鹿馬鹿しくなっちゃったから、止めにしただけよ」 ライ「ふーん・・・」 リシェル「ポムニットめ・・・。余計なこと言うなって釘刺しとかなきゃ」 ライ「照れるな、照れるな。オレ、ちょっと感心してるんだからさ」 リシェル「・・・え?」 ライ「なんだかんだ言って、オレはまだ当分はバカ親父のことを許せそうにないしな」 リシェル「ライ・・・」 ライ「だからさ、お前とオーナーが仲直りしてくれたってことがさ、なんか嬉しいんだ 自分のことみたいでさ」 リシェル「そっか・・・」 ライ「ところでさ、リシェル。店を手伝わせといて言うのもなんだけど、召喚術の勉強の方は問題ないのか? 派閥に正式に属するからには、色々と準備もあるんだろ?」 リシェル「アンタねえ 誰に向かって言ってるつもり? このリシェル様に抜かりはないわよ。次の定例考査で、ばっちり、華麗に派閥デビューしてあげちゃうんだから」 ライ「ははっ、その調子ならホントに大丈夫みたいだな」 リシェル「心配しないでよ。あたしは、やる時はやるんだからさ。可愛い弟の未来がかかってるんだから、尚更、ね」 ライ「ルシアンの?」 リシェル「そうよ、あたしが正式に金の派閥の一員になって、ブロンクスの家名を守れる立場になれば、ルシアンも安心して自分のやりたいことできるじゃない?」 ライ「自由騎士になる夢、か・・・」 リシェル「うん、最初はとんでもないって思ってたけどさ、本気みたいだからね。姉としては、やっぱ応援してあげなきゃ」 ライ「だよな・・・。となると、今みたくいつでも会えるっていうワケにはいかなくなるよな」 リシェル「心配いらないってば。あのコも、あたしも あんたの作る料理で育ってきたんだから。ほっといたって 味が恋しくなって顔を出すわよ」 ライ「なんか、餌付けしてるみたいだな。それって・・・」 リシェル「近いものはあるかも。むしろ心配なのは、この店の方ね。あんた一人でやってけるの?」 ライ「なんとかするさ。元々は、一人でやってたんだし。それに今はミルリーフだっていてくれるしな」 リシェル「うーん・・・それでも、やっぱ不安だなあ・・・。よし、決めた! 派閥に入っても、あたし、助っ人にきてあげるわ」 ライ「え、でも・・・」 リシェル「大丈夫だって。出来る範囲でしか無茶はしないから。ポムニットと相談して、かわりばんこに手伝いにくるわ。なら、文句はないでしょ?」 ライ「・・・ったく 言い出したら聞かないもんな。・・・ありがとな?」 リシェル「水くさいことは言いっこナシナシ。なんたって・・・あたしの将来にも、無関係な問題じゃないし・・・」 ライ「???」 リシェル「と、とにかくっ そーゆーことで決定だかんね! せいぜい、感謝しなさいよぉ?」 ライ「自分から言っといて、やたら偉そうだなお前・・・」 リシェル「そりゃそうよ? だってあんたは、永遠にあたしの家来なんだから!」 ライ「へいへい・・・。わかりましたよ、ったく・・・」 リシェル「えっへへへ♪」 我儘言ってゴメンね でも、ホントはいつも感謝してるんだよ だから、ずっとあんたの傍にいてあげる 平凡で退屈な人生でもずっと傍にいさせてね? ・・・大好きだよ 『変わらないままで』 |
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