バルレル×トリス夜会話


▼第1話

バルレル 「おい、ニンゲン。どうして野盗の連中を殺っちまわなかったんだよ?」
トリス 「相変わらず乱暴ね。すすんで殺す必要はないのよ」
バルレル 「けッ! なァに甘いコト言ってやがる。 戦いってもんはなァ、殺すか殺されるかってもんなんだ! わかってんのか!?」
トリス 「サプレスでは、そうだったんだね?」
バルレル 「おうよッ! 降参した次の瞬間に、いきなり不意打ちするヤツだっているんだ。 敵には確実にトドメをさすのが・・・」
トリス 「バルレル」
バルレル 「あァ?」
トリス 「心配してくれたの? あたしのこと」
バルレル 「なッ!? な、な、んなわけねえだろうがッ!? なんで俺がニンゲンごときに!」
トリス 「まるっきり忠告だよ、今の」
バルレル 「思いあがるなよな! ニンゲンッ!! テメエに死なれて、はぐれにされちまうと困るってだけだっ! いいか!? それだけのことなんだからなッ!?」
トリス 「はいはい」


けっこう、かわいいとこあるじゃない。 気をつけなきゃね、はぐれにしないためにも





▼第2話

バルレル 「気にくわねェな、あの連中。 一方的に斬りまくりやがって・・・」
トリス 「ええ、そうよね。 なにも病人まで襲う必要はないのに」
バルレル 「ケッ! 俺が言ってるのはそんなことじゃねェよ。 あれだけ人を殺したくせに、奴ら、感情をちっとも乱さねえ」
トリス 「たしかに、あいつらの落ち着きぶりは不気味だったわね・・・」
バルレル 「感情を露にするのがニンゲンだろうが? あれじゃ人形だぜ。 ったく、本当に鎧の中身は入ってんのかよ」


人形か・・・だから、あんなことができたのかも知れない





▼第3話

バルレル 「ワナだったな?」
トリス 「・・・・・・」
バルレル 「オレの言ってたとおりだったよなァ? ほれ、どうした? なんとか言ってみろよ、ニンゲン!?」
トリス 「悪かったわよ・・・」
バルレル 「はァ、聞こえねぇなぁ」
トリス 「あたしが悪かったわよ! その、バルレルの言うこと、信じなくて・・・」
バルレル 「ヒャハハハハッ! そういう言葉がずっと聞きたかったんだよ。 どうも、テメエはニンゲンの中でも特にお人好しって種類のようだからなァ。 ちっとは人を疑うことをおぼえるこったな」
トリス 「うう・・・」
バルレル 「まァ、なんならこのオレが指南してやるからよ? ひゃははははは!」

言い返せなかった・・・くっ、くやしい・・・





▼第4話

バルレル 「ヒヒヒ、ニンゲンよ。テメエもとうとう恨みをかっちまったってわけだ。 あのケルマっていうケバいオンナ、かーなーり、根に持つ雰囲気だぜェ?」
トリス 「嬉しそうな顔してなんてこと言うのよ。 それに、あたしは話し合いで解決しようとしたのよ。それは逆恨みってやつよ」
バルレル 「ケッ! 逆恨みだって立派な恨みだっての。 おうおう、見える、見えるぜェ? お前の背中にどんよりからみついた・・・あのオンナのどす黒い恨みの思念がよォ?」
トリス 「や、やめなさいよ!? そういうのっ!!」
バルレル 「ヒヒヒヒヒ」

もう!バルレルめ、見えないって知っててからかってるなぁ?





▼第5話

バルレル 「テメエの先輩とかいうオンナな、ありゃ、意外とやるもんだなァ・・・」
トリス 「へえ、珍しいわね。 バルレルが他人のことをほめるなんて」
バルレル 「しかたねェだろうが。 あれだけの軍勢に囲まれてるってのによ、あぁも見事なタンカを見せつけられりゃ、オンナだってバカにもできやしねェ・・・」
トリス 「ミモザ先輩はあれでも、メイトルパの召喚師としては幹部クラスの使い手だもの。 ギブソン先輩もそうよ。 あたしと同じサプレスの術の使い手だけど、あたしには扱えないような強力な天使や悪魔を制御できるのよ」
バルレル 「あーあ、そういうスゲェ召喚師に誓約されたんなら、オレもあきらめがつくのに・・・よりによって、テメエみたいなヘナチョコの護衛とはなァ?」
トリス 「悪かったわね! ヘナチョコで」
バルレル 「ケッ、悔しかったらもっとウデを磨けよな。 テメエがそれなりに使える召喚師になれば、オレもそれなりに服従してやらァ? ま、テメエにゃ無理だろうけどよ」
トリス 「よーし、その言葉、忘れないでね!?」


いまに見てなさい、バルレルめ。 ぐうの音も出なくしてやるんだから!





▼第6話

バルレル 「チッ、殺気だった気配が完全に消えやがったぜ。 この様子だとアイツら、完全にテメエたちを見失ったみてェだな?」
トリス 「ふう・・・ひと安心ってとこね」
バルレル 「まァな。だが、これで終わりとは思えねェぞ? アイツのしつこさは、悪魔のオレでさえ呆れるほどだからなァ。 油断してると、後ろからバッサリってこともあり得るかもな? ヒヒヒ」
トリス 「あんたってつくづく、イヤなことばかり言うわね?」
バルレル 「おいおい、これでもオレは忠告してやってるつもりだぜェ!? ちっとは感謝しろって、ニンゲン?」


感謝したくなるような忠告にしてほしいわ…本当に





▼第7話

バルレル 「いやァ、大砲ってのは派手でいいなァ? ぶっ放した時の轟音! それに、火薬が燃える独特のあの香り・・・くーっ、いかにも破壊兵器ってカンジがまたたまらねェぜ!!」
トリス 「あんたって子は、まや変なトコで盛り上れるわよねぇ」
バルレル 「なァ、ニンゲン。 海賊退治の褒美にはアレをもらえって、な? な?」
トリス 「そんな物もらってどうする気よ?」
バルレル 「そりゃあ、もちろん所構わずぶっ放すに決まってんだろォが!」
トリス 「・・・やっぱり」
バルレル 「んだよォ? いいじゃんかよォ!?」


そんな物騒なこと、却下よ、却下!!





▼第8話

バルレル 「なァ、ニンゲン・・・」
トリス 「なによ?」
バルレル 「オマエはあのレイムってヤツ、どう思ってるんだ?」
トリス 「どうって・・・礼儀正しくて、親切で、自分の目的をしっかりもってる、素敵な人だと思うけど」
バルレル 「ケッ! エライほめようだな。 ひとつ忠告してやらァ。 アイツにゃ、あんまし関わるんじゃねェ」
トリス 「どうして?」
バルレル 「口先ばかりがうまいヤツにゃ、ロクなのがいねェって決まってるもんなんだよッ」
トリス 「なんなのよそれ? そんなのレイムさんに失礼じゃない!?」
バルレル 「うるせェな! とにかく、オレはアイツと関わるのはゴメンだからなッ!」
トリス 「待ちなさい! バルレル!?」


バルレルのヤツ、初対面で雰囲気負けしたから、きっと根に持ってるのね?





▼第9話

バルレル 「ったく、どいつもこいつも辛気くさい顔しやがってよォ・・・。 これじゃ、せっかく調子がよくたってハメも外せねェぜ」
トリス 「・・・・・・」
バルレル 「口うるさいコイツですら、文句のひとつも返してこねェし。 あーあ、つまんねェ!」
トリス 「うるさいなぁ。 そんなに退屈だったら、ルウの家で暮らしてる仲間と遊んだら?」
バルレル 「ケッ! あんな下級の言葉もしゃべれねェ連中と一緒にすんな! 今はこんな姿だがなァ、オレはもともと・・・」
トリス 「・・・・・・」
バルレル 「聞いてねェし。クソッ!」


バルレルのヤツ、状況を考えなさいよ、まったく・・・





▼第10話

バルレル 「あ、ニンゲン、気づいてっか? あのオンナのチカラ、だんだんと強まってきてるぜ? 結界ぶち壊すなんて尋常じゃねェぞ?」
トリス 「わかってるわよ」
バルレル 「どこまでいくのかわかんねェけどよォ、あれじゃ・・・ニンゲンとは呼べなくなるんじゃねェか?」
トリス 「わかってるっていってるでしょ!?」
バルレル 「ケッ! んだよォ、オレにあたるなよな!」
トリス 「・・・ごめん」
バルレル 「まァ、許してやらァ・・・」
トリス 「・・・・・・」
バルレル 「ケッ! オレもすっかりニンゲンに寛容になっちまったぜ。 アーッ、忌々しいッ。 先に寝るからなッ!?」


どうしたらいいのよ? どうしたら・・・





▼第11話

バルレル 「あのビーニャとかいうガキといい、その前のガレアノといい、連中の暴れっぷりは、悪魔のオレから見ても呆れちまう。 無茶苦茶すぎらァ」
トリス 「バルレルでもそう思うの?」
バルレル 「おい、コラ・・・『でも』ってのはなんだよッ、『でも』ってのはよォ?」
トリス 「だって、悪魔ってのは、ああいうことを好むもんなんじゃないの?」
バルレル 「まァ、そりゃ否定はしねェがよ。 けどな、あんな調子でばかすかニンゲン殺すのは、もったいねェってもんだぜ」
トリス 「?」
バルレル 「低能なテメエにもわかるように説明するとだなァ。 あっさり殺すよりも、とりついて、じわじわいたぶっていくほうが、悪魔にとってはうま味があるんだよ」
トリス 「!?」
バルレル 「その時々にニンゲンが吐き出す、様々な感情を味わいつくすのが醍醐味なのさ。 断末魔の苦しみだけを食い散らかすってェのは、下の下なんだよ」
トリス 「な、なるほど・・・」


なんか、とんでもないことを力説されたような気がするわね





▼第12話

バルレル 「ケッ!まさか鬼の野郎が出しゃばってくるとはなァ…」
トリス 「バルレル。なんか、あんた敵意むき出しってカンジじゃない?」
バルレル 「あたりめェだろうが! ったく、シルターンの鬼神と、オレたちサプレスの悪魔ってのはなァ、テメエらの世界を奪い合った宿敵同士なんだよッ!」
トリス 「あらら!?」
バルレル 「連中がオレたちと同じように、ニンゲンの心につけこんで、その感情を食らうってところからして気にくわねェ! おい、トリス。 間違っても、鬼にとりつかれたりなんかすんじゃねェぞ!」
トリス 「バルレル、あんた・・・?」
バルレル 「それぐらいなら、先にオレに食われろ! もったいねェからなッ!」
トリス 「・・・・・・」


変な期待をしたあたしがバカだった・・・





▼第13話

バルレル 「あァん? なんで、オレがテメエと祭りに行かなくちゃなんねェんだよ」
トリス 「なによ、せっかく誘ってやってるのに」
バルレル 「ははァ・・・さては、他の連中には相手にしてもらえなかったんだなァ?」
トリス 「・・・! わかったもういいわよ。 そういうこと言うのなら他を当たるわ」
バルレル 「お、おいっ、ちょっと待て!」
トリス 「なによ?どうせ行く気はないでしょ?」
バルレル 「コホン。まァ、そのつもりではあったけどなァ。 あまりにテメエが哀れだから、ひとつ、同情で行ってやらァ」
トリス 「別に無理しなくたっていいのよ?」
バルレル 「あーっ、うっせェ! ついていってやるって言うんだから、素直に連れてきやがれッ!」
トリス 「(あらあら、素直じゃないのはどっちよ?)」


バルレル 「いいね、いいねェ。この乱雑っぷりはキライじゃねェなァ。 いろんな感情がごちゃ混ぜになってて飽きねェぜ」
トリス 「ほら見なさい、やっぱり、行きたかったんじゃない」
バルレル 「ん、なんか言ったか?」
トリス 「なんでもないわよ」
バルレル 「おっ?あそこで配ってるのはひょっとして、酒か!」
トリス 「振るまい酒ね。 どこの祭りでも普通にやってることよ」
バルレル 「くーっ、いいねェ! タダ酒なんて最高じゃねェかよ!?」
トリス 「しかたないなぁ。 少しだけよ?」
バルレル 「ヒヒヒヒヒ! そうこなくっちゃいけねェよなぁ!!」
トリス (やれやれ・・・まあ、今日だけは目をつぶりますか。 見かけはああでも一応、あたしの何倍も年上みたいだし)


バルレル 「うひゃひゃひゃひゃ!」
トリス 「こら、バルレル。いい加減にしっかり歩きなさい?」
バルレル 「ひっかりひてるっていっへるだろォがぁ?」
トリス 「まったく・・・調子に乗って何杯もあけるからよ?(酔いが冷めるまでしばらく、ここで頭を冷やさせるか・・・)」


バルレル 「おっ、なんらぁ!?」
トリス 「花火よ。 祭りもそろそろ終わりってことね」
バルレル 「もォ終わりかよォ? つまんねェな」
トリス 「そんなこと言って、バルレルは毎日がお祭り気分じゃない。 好き放題に言いたいことを言ってるし」
バルレル 「そりゃァ、そうか? ひゃはははははははっ。 けどなァ、前の主人ってのは、テメエの百倍はひでェヤツだったぜェ・・・」
トリス 「え・・・?」
バルレル 「研究だかなんだかしらねェが、呼ぶたびオレの身体を切り刻みやがって・・・悪魔だって、痛ェもんは痛ェんだぞッ!?」
トリス 「バルレル・・・」
バルレル 「ケッ! まァいいさ。 テメエが生きてる限りアイツはオレを呼べねェ・・・安心して高いびきだぜェ・・・ぐおぉぉぉっ」
トリス (そういえば、あたしはいつもケンカしてて、この子の過去、なにも知らなかったのよね・・・)





▼第14話

バルレル 「薄々たァ感じてたがよ。 これではっきりしたな」
トリス 「なによ・・・」
バルレル 「あのオンナがニンゲンじゃねェってことさ」
トリス 「えっ!?」
バルレル 「ザコとはいえ、悪魔がうろついてる森の中で、普通の人間が生きてられっか、あァ?」
トリス 「それはっ」
バルレル 「それにそう考えりゃ、アイツの持ってる力の異様さにも説明がつくってもんよ。 悪魔の森で拾われた聖女か。 ヒヒヒヒヒッ、こりゃ傑作モンだよなァ」
トリス 「バルレルっ!!」
バルレル 「な、なんだよっ」
トリス 「今みたいなことは二度と言わないで!!」
バルレル 「あ、あのなァ!? オレは別にデタラメを言ってるんじゃ・・・」
トリス 「そんなこと関係ない! とにかく、もう絶対口にしないで・・・わかった?」
バルレル 「ケッ! わかったよ。黙っといてやらァ。 ったく、ムキになりやがってよ」


それぐらい、あたしだって、わかってるわ。 言わないだけで、みんなだって・・・





▼第16話

トリス 「でも、あんたが心配してくれるとは正直、思わなかったわ」
バルレル 「ケッ! 悪かったな!? ・・・と、悪態をつくところだがなァ。 オレにはオレの都合もあったんだよな。実はよ・・・」
トリス 「へ?」
バルレル 「食い飽きちまったのさ。 重っ苦しい感情はよ。 今回の騒ぎで、どいつもこいつも悩みまくってたからな。ひとしきり味わってはいたものの、ずっとノーテンキなテメエにくっついてたせいで、すぐに飽きちまってな。 だからよォ…」
トリス 「・・・・・・」
(ポカッ)
バルレル 「うぎゃっ!?」


つくづく・・・っ! この子は・・・っ!





▼第17話

バルレル 「ケッ! だから前にも忠告しといてやったろうが。 アイツにゃ関わるなってな!?」
トリス 「うん・・・」
バルレル 「あのオンナにもよォく言い聞かせておくこったな。 テメエに輪をかけてお人よしだからなァ。 またぞろ、おなじことをやらかしかねねェ」
トリス 「ねえ、バルレル?」
バルレル 「あァ?」
トリス 「あんた、ひょっとして最初から、あの人がデグレアの手先だって知ってたんじゃ?」
バルレル 「ば、バカ野郎ッ!? テメエ、オレが知っていて黙ってたって言うのかよォッ!!」
トリス 「そうは言ってないわ。 でも、あんただけが最初からあの人のこと警戒してたから」
バルレル 「ケッ! 言っとくがな、デグレアの手先なんかにゃ、オレはびびったりしねェぞ!? オレがアイツに近づきたくねェのは・・・!」
トリス 「ないのは?」
バルレル 「・・・・・・なんでもねェ」
トリス 「ちょっと、待ちなさいバルレル!?」


あの子、どうして途中で黙ったりなんかしたのよ・・・?





▼第18話

バルレル 「しかし、まあ、派手にやりやがったな、あの糸目オンナ・・・悪魔の力で、大地震を引き起こすとはなァ」
トリス 「うん、タダ者じゃないとは思ってたけど、さすが金の派閥の議長だけはあるわね」
バルレル 「ん?ちょっと待てよ。 たしか、テメエらが拾った召喚師のチビの母親が、あのオンナなんだろ? だったら、なんで親子で違った系統の召喚術を使うんだよ?」
トリス 「多分、父親譲りってことなんじゃないのかなあ。 詳しいことは聞いたことないけどね」
バルレル 「ヒヒヒ・・・なんか、複雑な背景がありそうだなァ?」
トリス 「下手に首を突っこむものじゃないわよ? バルレル」
バルレル 「ケッ! テメエが言えた義理かァ?」
トリス 「そうじゃなくて! 一歩間違ったら、ほら、あのファミイさんを敵に回すってことになるのよ?」
バルレル 「う・・・ッ」


さすがのバルレルも、ファミイさんに悪さはできないわよねぇ?





▼第19話

バルレル 「ケッ! どいつもこいつも、ニンゲンはバカ揃いだぜ。 自分の上にいるヤツが何者かぐらい、テメエで把握しろってーの!」
トリス 「それができないようにしてたのが、あいつら三人の巧妙なところなんじゃないの」
バルレル 「オレからすりゃあそんなもんは、負け犬の遠吠えでしかねェよ。 特にバカなのは、あの黒騎士と、そのオヤジだな」
トリス 「こら! バルレル、そこで、どうして鷹翼将軍の名前が出てくるワケ!? あの人は、一人でガレアノたちと戦ってたんじゃない!?」
バルレル 「その『一人』でってところが、バカの極みなんじゃねェか。 相手は、街ひとつを乗っ取ろうとしてる連中なんだぞ? 一人で戦って、勝てるはずなんかねェだろうがよ!?」
トリス 「それは・・・」
バルレル 「ケツまくって、自分だけでも逃げときゃあよかったんだよ。 オレなら、そうやって後から倍返しするぜ?」
トリス 「・・・・・・」
バルレル 「勇気と無謀ってのはな、いつだって、紙一重のもんなんだよ。 今回のテメエの行動もまさにそれよ・・・ムキになって、無茶なことしやがって」
トリス 「バルレル・・・」
バルレル 「カッコつけて危険を犯すよりも、みっともなくても絶対に安全な方法をとりやがれ! ・・・わかったな?」
トリス 「うん・・・悪かったわよ・・・」
バルレル 「ケッ! ニンゲンに説教するたァ、オレも相当ヤキが回っちまったもんだぜ」


悔しいけど、たしかにバルレルの言ったことは図星かもしれない・・・




▼第20話

トリス 「ねえ、バルレル。 あの三人が悪魔だってこと、あんたはどうして気づかなかったの?」
バルレル 「ケッ、そいつはな、テメエのせいってもんなんだぜ?」
トリス 「え?」
バルレル 「召喚された悪魔はなァ、誓約されることでその力を、大きく制限されちまうんだよ。 ニンゲンごときでも命令ができるようにな」
トリス 「それじゃ、今のあなたは本来の力を抑えられてるっていうの?」
バルレル 「まァな。 だが、ヤツらは違うぜ。 誓約なんていう足かせに縛られてねェ。 だから、本来の力を好き放題に使うことができんのさ」
トリス 「ちょっと待ってよ? 誓約されてないってどういうこと!? あの悪魔たちはレイムさんが召喚したんじゃないの!?」
バルレル 「ケッ!そいつはテメエで考えなッ!!」


それが本当だとしたらいったい、どういうことなの?





▼第21話

トリス 「バルレル。 あんたもしかして、最初に出会った時からあの人がメルギトスだってこと、気づいていたんじゃないの?」
バルレル 「まァな。 いまさら気づくとは、テメエの鈍さにはつくづく呆れるぜ。 ケッ、それともオレの言い方が悪かったのか」
トリス 「・・・・・・」
バルレル 「で、どうする? メルギトスの強さは、ハンパじゃねェぞ?」
トリス 「それでも・・・あたしは最後まで戦う。 このまま、あいつをほっておけないもの」
バルレル 「バカか、テメエは!? 勝てねェんだよ!! ニンゲンがいくらあがいたところで! そんなに死にたいのか、ニンゲン!?」
トリス 「死なないし、負けるつもりもないわ?」
バルレル 「わからねェ・・・どうして、テメエは笑っていられるんだ? 笑いながら、勝ち目のない戦いをするなんて言えるんだよッ!?」
トリス 「そうね・・・人間、だからかな?」
バルレル 「・・・! オレは・・・ゴメンだからな!」
トリス 「わかってるわよ、バルレル。 あんたをはぐれになんてさせないわ。明日にでも、サプレスに帰してあげる。今まで・・・ありがと」
バルレル 「トリス・・・ウオォォォ〜〜ッ!!」


さびしくなるけど、仕方ないよね・・・?





▼第22話

トリス 「バルレル、あんた・・・今、なんて言ったの!?」
バルレル 「そんなに驚くようなことじゃねェだろうが、ったく・・・サプレスに帰るのはやめたって言ったんだよッ!?」
トリス 「いいの? このままだとあんたもメルギトスと戦うことになるのよ? 勝てる保証なんてまるでないのよ!?」
バルレル 「わかってるぜ、んなこたァ・・・だがな、オレにだってメンツがあるんだ。 このまま帰ってみろ? 手下の連中たちにナメられちまうぜ!!」
トリス 「は、はあ・・・」
バルレル 「つきあってやらあ! こうなりゃ、とことんやってやるッ!! 感謝しやがれよ、トリス!?」
トリス 「え・・・? バルレル、今、あたしの名前呼ばなかった!?」
バルレル 「うだーッ!? いちいち、細けェこと気にすんじゃねェ!! うれしくねェのか、どうなんだ!? トリスッ」
トリス 「そ、そりゃあ、うれしいわよ。 あんたみたいなのでも、あたしには、初めての護衛獣なんだもの。 お別れするのは、やっぱり、さびしいし」
バルレル 「よォし、いい返事だ」
トリス 「あんたはどうなのよ? バルレル」
バルレル 「ケッ! んなこたァどうだっていいだろ?」
トリス 「バルレル!」
バルレル 「・・・今まで見たニンゲンの中じゃ、テメエが一番マシなんだよ!それだけだッ!!」
トリス 「そっか。あはっ、ははは」


ありがとう・・・バルレル・・・





▼ED


バルレル 「オラ・・・テメ・・・まで・・・」
トリス 「ん・・・」
バルレル 「・・・で・・・つもりだッ!?」
トリス 「ん、んん・・・???」
バルレル 「さっさと起きやがれ! トリスッ!!」
トリス 「ふぁ・・・? おふぁよぉ・・・っ・・・バルレル・・・」
バルレル 「ケッ! なァにがおはよぉ、だ、ったく・・・わざわざ、オレが起こしに来てやったってのに。 メシはもうとっくにできてんだぜ。 アイツに怒られても知らねェぞ?」
トリス 「へっ!?」


アメル 「もぉ、トリスもバルレルくんもねぼすけなんだから。 せっかく焼きたてのパンだったのに、冷めちゃいましたよ」
バルレル 「ケッ! オレまでひとまとめにすんじゃねェよ、アメル」
トリス 「はいはい。 どーせ、あたしがみんな悪いんですよーだ」
ネスティ 「だからといって、開きなおればいいというものでもあるまい。 どうだろう、アメル。 寝坊の罰として、朝食を抜くというのは」
アメル 「あ〜、なるほど」
トリス 「ちょ、ちょっとそれってシャレになってないってば! ねえ、アメルぅ、勘弁してよぉ」
アメル 「どーしようかなぁ?」
バルレル 「なっさけねェなァ。 おい、見てみろよこのツラ・・・メシを抜かれたら本気で泣きそうだぜ。 食べさせてやれよ」
アメル 「ふふふっ、それじゃあ今日のところはバルレルくんに免じて・・・ね」
トリス 「やりぃーっ!!」
ネスティ 「バルレルに感謝しておくんだぞ、トリス」
トリス 「うんっ! うんっ! ありがとね、バルレルっ♪」
バルレル 「ヒヒヒッ、この貸しはでけェぞォ、トリス」
ネスティ 「食事が済んだら、昨日のおさらいとして試験をするからな」
トリス 「いっ!?」
ネスティ 「戦いで学んできた君の召喚術は、技術だけが先行して、理論を無視してるからな。 この機会にみっちり追いついてもらわなくては困るんだ」
トリス 「むう〜っ」
バルレル 「おーっ! 一難去って、また一難だなァ」
アメル 「じゃあ、あたし、お勉強が終わるまでに、おいものケーキ焼いておきますね」
ネスティ 「ありつけるかどうかは、試験の点次第だがな」
トリス 「(あちゃあ・・・っ)」
バルレル 「ま、ダメだったら、オレがテメエの分も食ってやるからよォ」



トリス 「しかし、ネスも毎日毎日、ひどいと思わない? 戦いが終わってみんなで暮らし始めてから、ずっと勉強づけなんだもの」

バルレル 「メガネの野郎も必死なのさ。 なにしろ、限られた時間をつかってテメエを強くしなきゃならねェんだ。 間違いなく復讐にやってくる・・・メルギトスの野郎に負けねェようにな」

トリス 「うん・・・わかってる、それは。 あの最後の戦いで、メルギトスは倒すことができたけど、リィンバウム中にばらまかれてしまった源罪までは、消し去ることはできなかった」

バルレル 「召喚されたんじゃねェアイツは、倒されても送還されたことにはならねェからな。 ばらまいた源罪を利用して、復活の時をどこかで待ってるに違いねェんだ・・・」

トリス 「それは、今日かもしれないし明日かもしれない。 ううん・・・もう、すでに復活して新たなかん計を巡らせているのかも」

バルレル 「ケッ! シケたツラァしてんじゃねェよ。 テメエらはそのためにこうして、集まって準備してるんじゃねェのかよ? 今度こそ、あの野郎をぶっちめるためによ」

トリス 「ええ、そうね。 強くならなくちゃ! あたしたちが、今度こそ全てを終わらせないとね」

バルレル 「ま、せいぜいがんばるこったな」

トリス 「その時には、また頼りにさせてもらうわ。バルレル」

バルレル 「ケッ! つくづく護衛獣づかいの荒いヤツだな、テメエは」





ま、いいさ・・・テメエの傍にいる限り、退屈だけは永遠にしねェだろうしな・・・







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