ネスティ×トリス夜会話


▼第1話

ネスティ 「やれやれ、こんな場所で野宿することになるとは思わなかったよ」

トリス 「仕方ないよ。下手に夜道を歩くのは危険だっていうし。それに、フォルテさんたちだけに後始末を任せるわけにはいかないでしょ?」

ネスティ 「まぁ、な」

トリス 「でも、久しぶりだよね。叱られる以外で、ネスと二人で話をするの」

ネスティ 「別に僕だって、好きで君を叱りつけてるわけじゃない。あんまり君が非常識なことをするから、つい口を出してしまうんだ」

トリス 「むぅ、反省してるわよ。これでも」

ネスティ 「どうだか…まぁ、おいおい確かめさせてもらうとしよう。まだまだ、旅は始まったばかりだしな」


あーあ、結局のところ説教されちゃうのねやっぱし…



▼第2話

ネスティ 「やれやれ…次から次へと厄介なことが続くな。この様子では、いつになったらファナンへたどり着けるのやら」

トリス 「ねっ、ねぇっネス…」

ネスティ 「謝っても無意味だよトリス。結果は変わらない」

トリス 「うう…」

ネスティ 「僕に余計な気をつかうことなんか考えずに黙って休んでおけ」

トリス 「え?」

ネスティ 「逃げる途中で倒れでもしたら、それこそ迷惑の極みだからな」

トリス 「…うん」


気をつかってくれたのはネスの方ね…ありがとう…



▼第3話

ネスティ 「襲ってきたあいつらは黒騎士の手のものだと思って間違いあるまい」

トリス 「でも、前と比べると一人一人の動きがばらついてたけど」

ネスティ 「おそらく、足りない人手をそこらで集めて使ったんだろう。傭兵や冒険者の中には金次第でどうとでも転ぶ者も多いからな」

トリス 「あのゼルフィルドって機械兵士も?」

ネスティ 「いや、それは違う。機械兵士はそう簡単に使えるものではない。
召喚するにしろ、遺跡から発掘するにしろ手間も費用もバカにはならないはずだ。」

トリス 「ということは…」

ネスティ 「やつらの背後にはそれだけ力のある組織がついているということだ。
そしてその組織はそれだけの価値をアメルに認めているということにもなるな」


そこまでしてアメルを狙うなんて、いったいどうして…?



▼第4話

トリス 「ねぇ、ネス…どうして蒼の派閥と金の派閥は敵視しあってるの?」

ネスティ 「蒼の派閥は召喚術を用いて、世界の真理を探求する組織だ。
対する金の派閥は営利を目的とした団体。思想からして相容れるものじゃない。
さらに問題なのは彼らのそうした行動が、結果的に権力者と結びつくことだ…」

トリス 「え?」

ネスティ 「君も知っているだろう?リィンバウムで起きた戦争のほぼすべてが心なき召喚師の浅慮によって引き起こされたものだということを。
世界の覇権をかけた戦乱の時代もエルゴの王が没した後の暗黒時代も、召喚術は戦争の道具として重宝され、多くの犠牲者を生み出した」

トリス  「そっか、だから蒼の派閥は必要以上に政治に関わるなって教えてるのね」

ネスティ 「そういうことだ。金の派閥はそうした過去の過ちを繰り返す可能性をもつ組織なんだよ。無論、それが全てだと言い切りはしないがな」


派閥同士の対立にはそんな深い理由があったのか…



▼第5話

トリス 「特務部隊「黒の旅団」…その名の通り秘密裏に編成された部隊…
道理で、資料からでは正体をつかむことができなかったわけね。って…、それは分かったんだけど…ねぇ、ネス…そのデグレアってそもそもなんのことなのかな?」

ネスティ 「……」

トリス 「…?」

ネスティ 「キミはバカか!?」

トリス 「い、いきなりなんてこと言うのよ。ひどいじゃない?」

ネスティ 「ひどいのは君の物覚えの方だっ!ミニスだって知っていたんだぞ?恥ずかしいとは思わないのか!?」

トリス 「そんなこと言ったって知らないものは知らないし…」

ネスティ 「君の場合は知らないというよりも、知ろうとしていないというのが正確だ。
…決めた。その質問の答えは君自身の手で調べて見つけてくるんだ」

トリス 「えーっ!?」

ネスティ 「えーっ、じゃない!二階の書庫を調べればすぐにわかるはずだ。
今後どうするかについてはそれからだ。まったく、無駄な時間をとらせて…」

トリス 「無駄って思うんならさっさと質問に答えてくれれば…」

ネスティ 「いいから、さっさと調べてこいっ!?」

トリス 「とほほ…」


うーっ、まさか宿題を押しつけられるハメになるなんて…



▼第6話

ネスティ 「こんな形でファナンにやってくることになるとは、皮肉だな」

トリス 「そう言わないでよ。ほら、怪我の功名って考えれば…。」

ネスティ 「その言葉は、こういう時に使うべきものではなかろう?」

トリス 「うう…」

ネスティ 「それにしても、やはり僕たちの考えることなど、先輩たちにはお見通しだったな」

トリス 「うん、結局最後の最後まで迷惑かけっぱなしだった気がする…」

ネスティ 「借りを返そうなんてことは無理だろうが、目的を果たした上できちんとお礼を言いにいきたいものだな。それが、二人のしてくれたことに対して僕たちが報いる最良の方法になるはずだ」

トリス 「うん、そのためにもアメルを無事に送り届けないとね」


ここから先はあたしたちがあたしたちの手で道を切り開いていくのよね



▼第7話

トリス 「海賊が召喚術を使ってくるなんて、予想もしなかったわ」

ネスティ 「志の低い召喚師の中には、金銭と引き替えにして召喚術を伝授する者達がいる。
おそらくあの海賊達もそういった連中から術を学んだんだな」

トリス 「無責任な話よねぇ」

ネスティ 「相応の魔力と、誓約を済ませたサモナイト石さえあれば召喚術を発動させることは誰にでも可能だ。
しかし、それを正しい形で制御するためには相応の訓練と知識が不可欠となるんだ。
それを軽視すると術の暴発や召喚獣の暴走による事故を引き起こしてしまう」

トリス 「ええ…あたしもそうだったからよくわかるわ」

ネスティ 「召喚術を使う者はその力の恐ろしさを忘れてはならない。
それをわきまえぬ外道の召喚師たちを罰するのもまた蒼の派閥の役目なんだよ」


そう考えるとあたしの受けてきた訓練ってやっぱり必要なことだったのね…



▼第8話

トリス 「あのガレアノって召喚師、何者だったのかしら?たった一人で、砦ひとつを陥落させるなんて…」

ネスティ 「奴の素性も気になるが…それより僕が気になるのは、砦を襲った目的のほうだ。砦の兵士を殺し合いさせて、いったい何の得があるんだ?」

トリス 「まさか、面白半分でやったんじゃ…」

ネスティ 「その可能性も皆無とはいえないが、もっとあり得そうなのはトライドラと敵対する国家に雇われての破壊工作行為…」

トリス 「それじゃぁ、あいつもデグレアの関係者ってことなの!?」

ネスティ 「そう断言するには証拠がなさすぎるがな。どのみち、今日の一件については、本部へ報告する必要がある。ガレアノについての情報も、調べてもらうように申請しておくよ」


もしネスの予想が事実だったらデグレアはなにを企んでいるんだろう?



▼第9話

ネスティ 「地図に表記されてないことが、裏目だったか。最初から、ここが禁忌の森だと知っていれば、近づかせなどしなかったのに。それとも…やはり、必然だということなのか…?」

トリス 「むー、ネスぅ?さっきから、ぼそぼそなに言ってんのよぉ?」

ネスティ 「…っ!?いや、なんでもないひとりごとだよトリス」

トリス 「ふーん…うみゅぅ…」

ネスティ 「やれやれ…寝ぼけるクセは相変わらずらしいな。トリス…」


寝ぼけるなって言われてもちっともおぼえがないんだけど。むぅー???



▼第10話

トリス 「それじゃ、どうしても話すことはできないって言うのね」

ネスティ 「ああ、禁忌の森に関することは、派閥の極秘事項として扱われているものなんだ。それを僕の独断で昇格したばかりの君に話すことはできないよ」

トリス 「わかった…でも、そんな極秘事項だっていうのなら、ネスはどうしてそのことを知っているのよ?」

ネスティ 「…!!」

トリス 「それも、やっぱり話せないこと?」

ネスティ 「ああ、そうさ。話せないことなんだ。禁忌の森にまつわることの全ては、隠され続けなくてはならない。そうしなければならないんだ…」

トリス 「…わかったわ。もう聞かない。おやすみ!!」

ネスティ 「……」


なによ…そんなにあたしのこと信用できないの?ネスは…



▼第11話

ネスティ 「やれやれ、これでまた黒の旅団に手がかりを与えることになってしまったな」

トリス 「そういうけどさ、もしネスが言うとおりガレアノとビーニャが同類だとしたら、どっちみち、あたしたちの動きはあいつらに筒抜けだったってことになるじゃない?」

ネスティ 「ふむ…それもそうか。どうやら僕たちと連中の間には、よほどの巡り合わせがあるらしいな。腐れ縁ってやつだな?厄介なことだよ。腐れ縁など、ひとつで充分だというのに」

トリス 「ねぇ、ネス。その腐れ縁ってのはもしかして…」

ネスティ 「僕の口から言わせるつもりか?はっきりと?」

トリス 「……」


正面から攻めてこないぶんこっちの腐れ縁のほうが厄介な気がするわね…



▼第12話

ネスティ 「これではっきりしたな。ガレアノ、ビーニャそして、キュラーはデグレアに雇われた召喚師だ…」

トリス 「でも、デグレアってどうやって、あんな恐ろしい連中を味方につけたのかしら?そもそも、旧王国が聖王国と対立したのは召喚師をめぐる立場の違いだったんでしょ」

ネスティ 「ふむ、君にしてはよく知っていたな?」

トリス 「あのね…」

ネスティ 「君の言うように旧王国というのは召喚師が権勢を握ることを恐れるあまりに徹底的な弾圧によって排除しようとした武門の人間たちによる国家ではある。
だが、召喚術を否定するためには、それをねじふせる力が必要だ。毒をもって毒を制する、この意味がわかるか?」

トリス 「つまり、召喚師に対抗するために、召喚師をぶつける…?」

ネスティ 「ご名答だ。あいつらは、その時のためにデグレアが温存していた連中だろうな。そんな切り札を出してくるからには、今度の奴らの侵攻は…総力戦を覚悟したものといえるだろうな」


それじゃ、やっぱり戦争は避けられないってわけね…



▼第13話

ネスティ 「あのな…今がどういう状況かわかってるのか?」

トリス 「わかってるわよ。でも、どのみち祭りが終わらないことには身動きだってとれないじゃないのよ?」

ネスティ 「む…」

トリス 「なら部屋でじっとしていないで、あたしたちも祭りを楽しもうよ」

ネスティ 「だが、しかし…」

トリス 「いいから、いいから!たまには息抜きも必要よ」

ネスティ 「まったく…仕方のないヤツだ…」


<大通り>


トリス 「へぇ、すごい賑わいぶりねぇ」

ネスティ 「モーリンが得意げに話すだけはあるな。聖王都の建国祭に比べても華やかさでは引けを取らない祭りだよ」

トリス 「ゼラムの通りの大きさだと、ここまで派手なパレードはできないものね」

ネスティ 「建国祭で思い出したが君がやって来てから間もない頃に祭り見物に抜け出してひと騒ぎおこしたことがあったな?」

トリス 「そ、そんなことあった?」

ネスティ 「まさか、忘れたとは言わせないぞ」

トリス 「えーと…なんだっけ…。ケンカしたこと?」

ネスティ 「ああ、思い出すだけで情けない。召喚師が素手でゴロツキと取っ組み合いとは」

トリス 「だって、あれは向こうからケンカを売ってきたんだし。カッとなって、だからつい…」

ネスティ 「相手にした君が悪い」

トリス 「うう…」

ネスティ 「新品の服をボロボロにして、おかげで僕が繕うことになったんだ」

トリス 「悪かったわよ、あれは。今でもそう思ってる」

ネスティ 「まぁ、感心したのはあれだけやられ放題にされながら、召喚術をケンカの道具にしなかったことか。それだけは、今でも評価してるよ」

トリス 「ははは…」


<浜辺>


トリス 「へぇ…あの沖で光ってるのが全部、船なんだぁ?」

ネスティ 「豊漁と航海の安全に感謝して、海に供え物を流してるのさ。自然の恵みに感謝するこの儀式が、本来の祭りにあたるわけだ」

トリス 「あっ、花火だ…」

ネスティ 「ほう、船の上から打ち上げているのか」

トリス 「きれい…王都だと建物が邪魔になったけど、ここは海の上だからすごく見やすくていいいわね」

ネスティ 「なぁ、トリス」

トリス 「ん…?」

ネスティ 「君は、変わったな」

トリス 「えっ?ネス変わったって…」

ネスティ 「本部にいた頃は何に関してもやる気が感じられなかったのに、今は自分から積極的にいろいろなことに関わろうとしている。ただ、僕の言うことを義務的に聞いていた時とは大違いだよ」

トリス 「ネス…」

ネスティ 「あとは、行動に考えがついていけば問題ないんだがな。
そうすれば、僕が君の世話を焼く必要はなくなる…。すこしだけ…さびしいけどな…」

トリス 「…?」

ネスティ 「さあ、そろそろ戻ろう。明日からは、また忙しくなるぞ?」


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